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政府暗号通貨「松田プラン」第2回~国の借金をお金に変える政府暗号通貨「松田プラン」の概要

[財政と金融の究極の一手、政府暗号通貨「松田プラン」第2回]

日本の財政は先進国最悪とされる。2020年度末で、将来、税金で返さなければならない国の借金である普通国債の発行残高は900兆円を超えることになる。国債は60年かけて返すのが日本のルールである。子どもや孫たちの負担は大変ではないか、と、心配される方も多いであろう。
しかし、そのすべてを税金で返さなくても済む方法がある。国債をお金に変えてしまうことで、現状でも、国の借金の半分以上を消してしまうことができないわけではない。しかも、そのお金で、いまよりもっと便利な世の中が実現する。
そんなマジックがあるものか?何かまやかしがあるのではないか?と思われるかもしれない。しかし、情報技術の進歩は、いままで考えられなかったことをどんどん実現していく。そこから新しい発想が生まれる。
「仮想通貨」の基盤となっているブロックチェーンを活用して「法定通貨」を発行すればどうなるか。そして、その法定通貨を政府が発行すればどうなるか。一種の「コロンブスの卵」かもしれない。今回は、政府暗号通貨「松田プラン」の説明に入りたい。
「松田プラン」を理解するための一助となるよう、財政金融の仕組みについて述べた前回の第1回「日銀保有国債が返済不要な債務になっているカラクリとは!?」の記事は、こちらです↓

https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12580608352.html

●デジタル通貨で揺れ動く既存の通貨システム
最近では、中国だけでなく、世界の主要金融当局の7割がデジタル通貨発行について研究しているようだ。すでにフェイブックが提起するリブラ(Libra)が、各国の通貨当局に大きな衝撃を与えていた。スマホで手数料なしで一瞬で1ドル程度の少額でも世界中どこでも送金できるとなれば、新興国や途上国の金融包摂やユーザーの利便性を十分に顧みなかった既存の通貨システムの側としては、言い訳のしようもないであろう。
そのインパクトは、各国の経済政策のハンドリングを侵害するとか、国際金融情勢を不安定化させるといった経済面にとどまるものではない。通貨とは本来、国家主権そのものであり、人々に日常生活で最も頻繁に国家の存在を意識させているものだ。もし、20億人を超えるフェイスブックのユーザーたちがリブラを使い始めたら、国境を超えた「リブラ帝国」が誕生し、世界の政治レジームまで揺り動かすことになると予想する人もいる。
これまで「仮想」通貨だった暗号通貨を、世界の先陣を切って法定通貨へと導入する中国では、ブロックチェーン技術の開発は凄まじく、ビットコインがバージョン1だとすれば、現在はインテリジェンス機能を備えたバージョン6まで開発済みとの噂まである。
ブロックチェーンはビットコインのように「パブリックチェーン」として使われれば、中央に管理者が存在しないP2Pの分散型の仕組みになるが、これを中央に管理者が存在する「プライベートチェーン」として通貨を発行すると、発行元が、例えば日本のマイナンバーなどとは比較にならない精度の高いユーザー情報を得ることになる。
中国当局は表向き、国内での銀行間の決済システムなどへの使用にとどまるなどとしているが、いずれ中国が主宰する国際秩序形成である「一帯一路」構想にデジタル人民元が乗り、米ドルを脅かす基軸通貨化が進む可能性が高い。そもそも米ドル基軸通貨体制からの脱却は中国の長年の悲願である。米中新冷戦による世界の分断が国際通貨の世界でも起こることになる。
「債務トラップ」で知られる中国の手法は、相手国に人民元建てで貸し付け、ドル建てで返済を迫るというものだ。そもそも暗号通貨は貿易金融や国際決済の上で最もメリットが大きい。すでに日本では中国系電子マネーアプリが普及している。中国人を「おもてなし」する日本で、中国当局が人民に対する監視の手段としても普及させたいデジタル人民元や、これと接続する電子マネーを日本人が使用したらどうなるだろうか…。
やはり、日本として通貨主権と国民の個人情報を守り、情報技術がフル動員されている「ハイブリッド戦」からも国家を守る必要がある。そのためには、独自のデジタル法定通貨の発行が急務だろう。自民党要路からも「デジタル円」発行の声が出ている。

●財政再建はストック(国債残高)の処理で
筆者はかねてから、この「デジタル円」を法定通貨として、日本銀行ではなく政府が発行する「政府暗号通貨」のかたちで発行することを提案してきた。
政府には本来、通貨発行権がある。よく、政府紙幣を発行すべきだという議論が聞かれるし、現に日本政府はさまざまな記念硬貨を発行してきた。
その形態が紙や硬貨ではないだけで、デジタル通貨のかたちで政府が通貨発行権を活用すればよいというのが「松田プラン」の考え方だ。そうすれば、国債が政府暗号通貨に姿を変えることが可能になる…このメカニズムを以下、説明する。
国債発行残高が累積して先進国最悪となっている日本の財政は、筆者が財務省などで得てきた知見からみても、もはや、通常のフロー(毎年のお金の流れ)の対策では不可能な状況にある。つまり、財政再建の方法は、支出を削るか、増税をするか、経済成長を高めて税収を増やすといった3つのフローのルートでの対策しかないとされてきたが、それだけでは無理である。
そこで、筆者が着目しているのが、フローではなく、ストックの対策だ。ストックとは、資産や負債の残高である。一般の企業もそうだが、それはバランスシート(貸借対照表)で表されている。左側には資産、右側には負債と資本金を計上し、左側の金額の合計と右側の金額の合計が一致するようにバランスシートが組まれている。右側が左側よりも多いと、債務超過になる。企業として財務状況が健全ではない状態である。
「松田プラン」は、政府の負債というストック、つまり国債そのものを消滅させていくことで、抜本的な財政健全化を図ろうとすることを眼目の一つとしている。
国(政府)の場合は資本金がないため、資産より負債の金額が多いと、その差額が債務超過ということになる。2018年3月末の国のバランスシートでは、資産の額が671兆円、国債など負債の額が1,239兆円で、債務超過の額、つまり、それらの差である「純負債」は568兆円である。国債発行残高がたとえ900兆円であろうとも、その一部は資産によって裏付けられているので、本当の債務は、この純負債の金額でみるべきだとも言われる。

●政府と日銀を連結した「統合政府」でみると
ここに「統合政府」の考え方を導入する。これは、政府と中央銀行(日銀)を、あたかも一つの会社のようにみなして、両者のバランスシートを連結させて財務状況を判断する方法だ。これでみると、統合政府の純負債は、政府の純負債(568兆円)から100兆円以下にまで縮小する。なぜか。
統計の関係から時点は1年ズレるが、先に述べた2018年3月末時点での政府のバランスシートと、2019年3月末の日本銀行のバランスシートを連結すると、日銀が保有している470兆円の国債は、政府の日銀に対する負債であるとともに、日銀の政府に対する債権として資産に計上されている。バランスシートを連結すれば、両者は一つの会社のなかでの債権債務であるため、相殺される。
つまり、政府だけでみれば純負債は568兆円だが、日銀との連結で、そこから470兆円差し引いた98兆円が純負債として残っているだけということになる。
では、470兆円の政府の債務は、統合政府全体では、どうなっているのか?それは、日銀当座預金という日銀の負債に姿を変えている。
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つまり、アベノミクスのもとで行われている異次元の金融緩和で、日銀が保有する国債残高は、この金融緩和政策が始まる直前の2013年3月末の125兆円から、6年後の2019年3月末までの間に470兆円まで、345兆円増えている。これは日銀が民間から国債を買ってきたためで、日銀が国債を購入する代金は、民間の銀行が日本銀行に持っている日銀当座預金に振り込まれる。結果として、日銀当座預金は、この間、58兆円から394兆円へと、336兆円増えている。
この日銀当座預金394兆円は、日銀が返済しなければならないという意味での負債ではない。基本的には、日銀が国債などの資産を金融機関に売却しなければ縮小しない性格のものであることは、前回の第1回で解説したとおりだ。470兆円と394兆円の差額は、これも日銀の負債である日本銀行券(民間にすでに流通しているお札)に対応するかたちになっているが、これも日銀が民間に対して返済しなければならない負債ではない。
つまり、政府が民間に対して返済しなければならなかった国債は、日銀がこれを保有することで、民間に対して返済する必要のない帳簿上の負債に姿を変えていることになる。普通国債の発行残高の半分以上の470兆円もの国債が返済不要な借金になっている…、アベノミクスは思わぬところで、大変大きな財政再建効果を発揮しているともいえよう。

●財政再建を確定させる永久国債の考え方
ただ、この状態を放置しておくと、元に戻ってしまう。日銀が保有する国債も満期を迎えれば、償還しなければならないからである。
その時点で政府は借換債のかたちで国債を発行して民間から資金を調達するので、満期を迎えた日銀の国債は日銀のバランスシートから消え、その分、日銀当座預金も減り、日銀のバランスシートは縮小する。しかし、借換債の発行で民間に対して返済しなければならない国債が増えることになるため、財政再建効果は元に戻ってしまう。
そこで、せっかく実現している財政再建効果を持続させるために、満期を迎えた日銀保有国債は、政府が発行する償還期限を定めない永久国債に乗り換えていくことが考えられる。この永久国債は日銀から民間に売らないでくださいと、政府と日銀が協定(アコード)を結ぶ。そして、この永久国債に対して政府が日銀に支払う金利は、日銀が政府に納付することとすれば、政府は元本も金利も負担する必要がなくなることになる。
つまり、日銀が保有する国債は、満期を迎えるたびに、政府が民間に対して返済負担をする必要があるという意味での負債ではなくなる。
国債が消えるというのは、こういう意味なのである。日銀は永久国債から受け取る金利を政府に返しても、負債側は実質的なゼロ金利である日銀当座預金であるため、日銀が永久国債を保有することに伴う負担も実質的にはないことになる。(この点は少し複雑な解説が必要であり、ここでは省略する。)

●金融緩和の出口を円滑化させるために
さて、日銀はいずれ、インフレ率2%目標が達成された暁には、現在の異次元の金融緩和をやめて、日銀のバランスシートを縮小させていきたいと考えているであろう。それはまだ、少し先の数年後になる見込みで、それまでは日銀は国債購入をやめずに、バランスシートはさらに拡大していくと予想されるところだが、いずれ、そうした「出口」に向かうときがくるはずである。
ただ、この「出口戦略」は容易なものではない。中央銀行が出口戦略に向かうというだけで、金融市場では金利が急に上がる懸念があるからだ。日銀と同じく、国債などの債券を市場から買うことで「量的金融緩和」を行っていた米国のFRB(連邦準備制度)も、出口への転換の際には極めて慎重だった。現在は再び、金融緩和に戻っている。
恐らく、「出口」で日銀が保有する国債を民間に売却するというのは、金利が急騰する懸念から、実際にはなかなか簡単に踏みきれない政策であろう。
では、拡大したバランスシートはどうやって縮小するのか。
ここで出てくるのが「政府暗号通貨」だ。
政府がこの政府暗号通貨で日銀が保有する永久国債(日銀が保有するそれ以外の国債でも構わない)を償還すれば、その分、日銀の資産は国債から政府暗号通貨へと置き換わる。政府暗号通貨は日銀が保有すれば、それは日銀の資産になる。(日銀が暗号通貨を発行すれば、それは日銀の負債となるので、この点が日銀コインとは異なる。)
日銀が自らの資産となった政府暗号通貨を民間の銀行に売れば、国債を売ったときと同じように、その分、日銀の資産は縮小し、日銀の負債である日銀当座預金も同額、縮小する。こうして、日銀のバランスシートが縮小することになる。
国債を売って金融市場に混乱をもたらす懸念なく、いまの金融緩和政策が自然に出口を迎えることが可能になるのである。

●財政規律もインフレも懸念は不要
政府が暗号通貨を自ら発行することになれば、それが打ち出の小槌となって、財政はどんどん膨らんで規律がなくなるし、お金の供給量が増えてインフレになる…そう懸念される方も多いだろう。
ここで、政府暗号通貨の発行に次のような厳格なルールを設ければ、その懸念は払拭される。すなわち、政府暗号通貨を一般の方々が手にするためには、その小売店である銀行の窓口で購入することとし、銀行は、それに応じて、卸売店である日銀から政府暗号通貨を購入し、日銀は、製造元である政府に対して、日銀が保有する(永久)国債を政府暗号通貨で償還するよう要求することにすればよいのである。
こうした場合に限って、日銀からの要請に応じて政府は暗号通貨を発行できるという厳格なルールを設ける。こうすれば、政府は発行したいときに暗号通貨を発行できるわけではなく、民間からの需要に応じた受け身のかたちでのみ、発行できることになる。
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政府暗号通貨を購入する一般の方々や企業などは、購入金額を預金口座から引き落としたり、現金で購入したりすることになる。従って、市中のお金の量(マネーストック、マネーサプライ)は、その構成が、預金通貨や現金から政府暗号通貨へと移るだけであり、全体の量は、これによって変わるものではない。インフレの懸念はない。
政府暗号通貨の財源は、日銀が保有する国債であり、日銀当座預金であり、市中で流通する日本銀行券である。現在、上記の数字でみたように、それらがこれだけ巨額であれば、財源としては十分であろう。
アベノミクスは、国債を消して財政再建をしてくれたことと、暗号通貨発行の財源を蓄えてくれたという二重の意味で、大きな成果をあげていると評価できることになる。
では、こうした財源を超えて、政府暗号通貨への需要が高まったときは…?そのときは、通貨供給量をコントロールする日銀の出番であろう。だからこそ、このオペレーションでは、発行元の政府と需要側の民間との間に、当初から日銀を介在させているのである。
逆に、政府暗号通貨への需要があまりなかったとすれば、このオペレーション自体に意味がないのではないかという懸念もあろう。
実は、人々が政府暗号通貨を買いたいと思うだけの十分な仕掛けがある。それが、ブロックチェーンの特性である「スマートコントラクト」だ。これにより、政府関係の手続きが支払いと一体となって、利便性の高い世の中を効率的に創り出すことになる。
以上は「松田プラン」の概略である。ただ、現在、日銀も含め各国の中央銀行が研究を進めているのは、多くが中央銀行発行のデジタル通貨であるCBDC(Central Bank Digital Currency)を念頭に置いており、「松田プラン」のようにデジタル通貨の発行元を政府とする案はあまり聞かれない。
次回は、なぜ、デジタル円は政府発行でなければならないかを切り口に、「松田プラン」についてもう一歩踏み込んだご説明をしたい。
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プロフィール

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Author:matsuda-manabu
松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。

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