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動画ろんだん@松田政策研究所⑮~(特集)カルロス・ゴーンの国外逃亡~松田学の論考

ゴーン国外逃亡と、その後のレバノンでの記者会見をめぐって、日本の司法制度や国としての信用に関わる論点まで、国際社会からも議論百出です。今回は、この問題をどう考えるべきか、私からの問題提起に加え、ゴーン被告をめぐって提起されているさまざまな議論について、年明けから松田政策研究所チャンネルで何人かの有識者の方々に発信していただいた動画をご紹介します。
国外逃亡に関しての日本の国境でのチェック体制については、すでに本ブログの次の議事で発信しておりますので、ご参照ください。
https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12566563583.html

Ⅰ.松田学からの問題提起
さて、レバノンで行われたゴーン氏の記者会見、期待?に反して抽象的、感情的で内容空疎なものでした。映画化も予定されているこのサスペンス物語は今後も展開が続くでしょうが、私たち日本人として考えるべき論点がたくさん提起されているように思います。

●国際世論戦へと舞台は移った
まず、ゴーン事件の係争の場が日本の法廷から、国際世論戦の場へと移行したことです。日本が国際情報戦・世論戦に弱い国であることは、従軍慰安婦問題でも示されてきた通り。弁護士が同席できない、拘束期間が長い、最初にストーリーありき、有罪率ほぼ百%、妻とも会えず、非人道的…日本の司法制度へのゴーン被告の批判には事実誤認も多いようですが、言論の自由?を回復した同氏の今後のプロパガンダが、日本があたかも前近代的で全体主義的な国であるかの如きイメージ形成に結びつけば、日本の国益上、大問題です。日本は外国人が活躍できない特殊な国との批判が、ゴーン逮捕の頃から海外で出ています。
もちろん、日本の検察の手法にも改革が求められるでしょう。かつて、無罪判決となった村木厚子・元厚労次官に対する不当な捜査も国民の記憶に新しいところです。特にゴーン事件の場合、有価証券報告書の虚偽記載について一部の企業会計の専門家から犯罪性をめぐる異論が出ており、特別背任についても会社としての手続きを経た支出の違法性に対する疑問の声が日本の国際ビジネスマンたちから出ていました。
国策捜査による無理筋の立件だった?との疑問を十分に払拭できるだけのエビデンスを、日本の当局が国際社会に示す必要がありますが、その方法が果たしてあるのかないのか…?確かに、日本の国民感情からいえばゴーン氏は指弾すべき人物ですが、けしからん論で人権が制約される国だとなると別問題。自由主義法治国家の名が泣くことになります。

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もう一つの論点が、和を以て尊しとなす、何事も話し合いでの合意形成を大事にする日本の企業社会のあり方との関係です。ゴーン被告がかつて、日産の経営を見事に立て直したのは、しがらみのない外国人ゆえリストラ改革を断行できたから。大企業トップとして日本では異例の利得を享受していた同氏を批判するなら、その前に、ではなぜ、外圧ではなく、日本人自身の手による改革ができなかったのかを考えるべきでは…?
何事も平等社会の日本の大企業トップの報酬が国際標準よりも格段に低いことが、日本の生産性や競争力の向上を妨げてきた面、なきにしもあらずです。株主代表訴訟だけでなくさまざまなリスクをとってトップが大胆な決断ができるためにはどうすべきか。電子データ主導経済となり、データサイエンティストの争奪戦が起こるなかで、年功賃金も含めた日本の企業文化そのものが成長の大きな足かせとして指摘されるようになっています。
これまでの日本社会のメリットを活かしつつ、国際競争に勝てる人材登用の仕組みをどう構築するか。海外の人材を入れても、自分たちの都合の良いときはもてはやし、自分たちの掟に反したときは村八分、日本は身勝手な国だ、と思われてはまずいでしょう。
ただ、ゴーン被告の国外脱出そのものが日本人として絶対に看過できないのは、それが日本の国家主権に対する侵害だということではないでしょうか。拉致問題を始め主権侵害への対抗力を十分に示してこれなかった国が日本です。

●大事なのは国家主権への意識
ここで気になったのが、日本政府の5日間にわたる沈黙です。森法務大臣が国外逃亡に関して最初に出したコメントは、大晦日の国外逃亡から5日経った1月5日。その後、ゴーン被告の記者会見の直後の1月9日は第二回目のコメントを東京地検の次席検事とともに出しましたが、国際情報戦の専門家である山岡鉄秀氏は松田政策研究所チャンネルで、少なくとも国外逃亡それ自体が日本の主権侵害なのだから、詳細が明らかになるのを待つまでもなく、その直後の1月1日にも、これが決して是認できない事態である旨、日本政府としてなんらかの意思表示を発信すべきだったとしています(後掲の動画をご参照)。
確かに、世界中で報道されている本事件に対して政府はどう思っているのか?私もそれが見えない違和感を正月から感じていました。
今年はいよいよ憲法改正の議論が国会で進まなければならない年ですが、9条に「自衛隊を置く」と規定するのも、他国と同様、主権を守る国家意思を憲法上、明確にするためのもの。今回の事件は、国家主権という観点からも、ややもすれば、その意識が希薄な私たち日本人に対して問いかけるものが多い事件ではないかと思います。
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この事件に関してもう一つ重要なのは、物事の当否や真偽ではなく、日本が国際社会からどのような国だとみられることによって失う国益のことを考えねばならないことです。
八幡和郎氏が松田政策研究所チャンネルで、ゴーン被告の国外逃亡について、こんな指摘をしていました(後掲動画ご参照)。…中国で「反スパイ法」で拘束された日本人が十数人、これも中国の国内法制に従って逮捕されたものだが、その一人が逃亡して日本に逃げ帰ってきた場合、日本国民はその人を糾弾するだろうか?よく帰ってきた、となるのではないか…。
もちろん、日本としてはゴーン被告による主権侵害を強く非難すべき立場ですし、中国のような国とは人権に対する配慮や司法制度が全く異なる国です。しかし、これが国際世論戦の舞台となると、話は別。日本が人権について中国と同類項扱いされてはたまりません。問題は、日本人が想像する以上に、国際社会の日本に対する理解は、必ずしも正確ではないということにあります。
国際世論戦といえば、習近平が国賓待遇での来日で天皇陛下と一緒に写真に収まることになりますが、それが国際社会にどんな印象を与えるかを心配する専門家もいます。全体主義と人権弾圧の権化である中国のトップと日本の天皇陛下が親しげに並んでいる、やはり日本はファシズムの国…私たちは全く意識していませんが、日本の戦争犯罪を糾弾する勢力が跋扈している国際社会でのプロパガンダの現実はそうだとのこと。
私の大学時代からの友人で、定年退官が近い検察の最高幹部の一人が、先日、こんなことを漏らしていました。「日本の検察は本当にコワい。みんなが赤信号で渡っているのに、そのなかから狙い撃ちして違法だとして大きな事件にしている。そろそろ卒業できるのでホッとしている。退官後はそんな問題も外から指摘していきたい…」と。
「推定無罪」が国際社会の常識だとすれば、報道されたり逮捕されただけで社会的に葬り去る日本社会のあり方も含め、国際世論戦で突かれそうな穴をどうするか、日本としても考えるべきことが多々あるように思います。

Ⅱ.ゴーン逃亡問題をめぐる動画ろんだん
●[対談]山岡鉄秀(情報戦略アナリスト)「ゴーン問題の舞台は国際情報戦へ!日本政府は今こそ徹底的に対応せよ!」
ゴーン被告の国外脱出によって、本件は言論戦という形の公開裁判へと舞台が移ることに…。そうなるとどうも、日本政府の対応には問題が多い…主権意識も鈍すぎる…。
ゴーン劇場は今後も展開が続くでしょうが、私たち日本人として考えるべき論点がたくさん提起されているように思います。その一つが、ゴーン事件の係争の場が日本の法廷から、国際世論戦の場へと移行したということです。そこで、国際情報戦・世論戦の観点から、山岡氏に登壇していだきました。日本がこの面で弱い国であることは、従軍慰安婦問題でも示されてきた通り。今回は、日本がいちばん弱い部分が出てしまっているようです。

●[対談]八幡和郎(歴史家・評論家)「今こそ国際標準の司法制度の導入を!ゴーン氏逃亡問題」
ゴーン被告の逃亡が日本の主権侵害だと言ってみたところで、どうも、舞台が国際世論戦へと移ったいまや、日本は苦戦か…?国際社会からみた論点提起を八幡和郎先生にしていだきました。
…中国で「反スパイ法」で拘束された日本人が十数人、これも中国の国内法制に従って逮捕されたものだが、その一人が逃亡して日本に逃げ帰ってきた場合、日本国民はその人を糾弾するだろうか?よく帰ってきた、となるのではないか…。
中国の司法制度はおかしいから送り返せとは、日本政府も国と国の礼儀として言わないであろう。それはレバノンも同じ。ゴーンの起訴は、このままでは、会社の権限争いに検察と政府が介入したと国際社会では見られてしまう。同じ犯罪を犯していた西川さんがなぜ起訴されないのか。司法取引が理由なら、それを曖昧にせず、手続きとして明らかにしないと国際社会では通らない。有価証券報告書での過少記載でいままで起訴された例もない。SECに対して認めたというのも、日本での裁判に集中するために手を打ったに過ぎないもの。
ルノーがゴーンを告発しているのは、フランスでは簡単に起訴してしまうから。ラガルドは刑事被告人だったのにIMF専務理事だった。推定無罪が原則。最終的に重い実刑をくらった段階で職を引いてもらう。罪となっても執行猶予であれば公職を続けた例もある。殺人などの破廉恥犯とは扱いを異にしている。
日本政府が、犯罪人の言うことを聴く必要なし、などと言うのは、本来は我慢して言わないでいるべきこと。いかにヒドイ扱いをしていないか、本当は保釈しないのに外国人だから配慮したのだ、ということを言うべきだった。
妙に弁解せずに司法制度を改革すべし。米国なら許されるというわけではないのではないかとジワジワと言うべし。日本への理解者を増やしていくべし。ゴーンが公正な裁判を受けたいと戻ってくるぐらいの改革をすべし。
…少なくとも、日本は中国のようなことなどやっていないという理解を国際社会でされるような世論戦を展開しなければ、大陸のファシズムと戦う自由主義法治国家としての名が泣くかもしれません。

●[対談]海野恵一(スウィングバイ株式会社代表取締役、元アクセンチュア代表取締役)「ゴーン逃亡、中東・イラン問題、日本人は世界の情報を知らない?!」
日頃から国際社会から緻密な情報収集を行い、コンサルタント会社の社長としてかつての日産の内情もよく知る海野氏からも、ユニークな見方をお聴きしました。
日本人は直接、外国人と話をしないことが問題。外国人を論破できない。歴史の浅い米国人は聞いてくれるが、ヨーロッパ人は聞かない。自分はアクセンチュアの上司で来たオランダ人に反駁できず、悔しい思いで辞めた。
結局、日産は日本人たちだけでは自社の改革が出来ず、ゴーンという外国人を雇ったら、今度はゴーンに対して反駁が出来なかっただけ。
会社の決定とは外国ではボードが責任を持つもの。社外取締役もそのためにいる。ボードの責任を逃れようとするのは国際社会では通用しない。
日本の司法制度は信じられないというのが海外の見方…。

●[独り語り]松田学「カルロス・ゴーン逃亡の反省、国際世論戦ではやりかえせるか?」(チャンネル桜、1月21日配信)
この問題、私からチャンネル桜でコンパクトにまとめて発信しております。

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プロフィール

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Author:matsuda-manabu
松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。