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今回の消費増税で先送りされた社会保障財源の確保~税率引上げは10年間、本当にないのか<その2>

前回の<その1>では、今回10月1日の消費増税がその後の消費を冷やした2014年の増税とは性格が大きく異なっており、実は財政再建にはあまり寄与せず、社会保障財源の確保という課題は先送りされたことを述べた。前回<その1>の記事はこちら↓

https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12535457664.html

安倍総理は在任中の消費税率の更なる引上げを否定しただけでなく、参院選前の記者会見でも臨時国会での答弁でも「今後10年は税率上げは必要ない」と述べている。本当に10年間、消費税率は引き上げなくても社会保障財源は大丈夫なのか。今回<その2>でさらに論考を進めてみたい。

 

●今回の消費増税は安倍総理の財務省に対する勝利

確かに、今年の2019年に消費税率を引き上げたばかりなので、21年までの総理任期中は。さらなる引上げは必要ないであろう。しかし、総裁4選となれば、22年からは団塊世代の後期高齢世代入りが在任中に始まる。どうするのだろうか?今から10年も引き上げないとは、デフレが10年も続くとでも想定しているのか?

私の「松田プラン」のように、財政運営の仕組み自体を組み替える大改革でも準備しているのなら話は別だが、少なくとも私はまだ、総理に私の提案を説明していない。

 2度の増税延期を経て3度目の正直となった今回の消費増税は、一見、財務省の勝利のようにみえるが、むしろ、安倍総理の財務省に対する勝利だったのではないか。超高齢化社会(さらには、75歳以上の後期高齢者が66〜74歳の前期高齢者の人口を越える「重老齢社会」)の財源問題は、今後10年は税率引上げ必要なしとの安倍総理発言で先送りである。

今回の増税そのものは実施することで財務省の顔を立てつつ、実際には国民負担増を回避した…、安倍総理のその手腕は見事とすらいえよう。

国民の「心配を取る」ための発言だったそうであるが、ならば、今臨時国会で増税なき10年間の安心について、国民が納得できる道筋と根拠を明確に示してほしいものである。。私が現職議員なら総理にそんな質疑をぶつけるであろう。
今回の増税の直前の9月26日に、政府税制調査会が第2次安倍政権の発足後初めてとなる「中期答申」をまとめたが、通常は3年に1回の中期答申の間隔がこれだけ空くのは異例である。まともに税制を議論すれば、安倍総理が大嫌いな消費増税に触れざるを得なかったからであろう。7月の参院選直前の公表を避けるため、委員の任期を3カ月延長しての答申だったそうである。しかも、その内容は、消費税については「役割が一層重要になっている」と指摘するのみ。国民が知りたいのは、10%後の引上げの道筋だったはずだ。
かつて自民党税調のドン、山中貞則氏が政府税調を「軽視ではなく、無視する」と発言した逸話は有名だが、最終的な決定権を持つのは与党税調である。現在は総理官邸のほうが強いようだが、こうした権力機構が何を言おうと、中長期の視点から正論を示すのが政府税調の存在意義である。どうも、政府税調にまで「忖度」が広がっているようだ。
ここで思い出すのは老後2,000万円赤字問題だ。不都合な真実に光を当てた金融審議会の報告書を麻生大臣が受取り拒否したが、こうした「臭いものには蓋」的な体質が国民の政権に対する不信を増幅していないか心配である。「もりかけ」問題もそうだったが…。「忖度」自体は人間社会には付き物。問題は忖度を招く政権の体質にある。それが自由な言論を封殺し、国民が真実を知り、自ら考えることを阻害することにならないだろうか。

●10年は税率引上げなしの根拠
ただ、10年は引上げの必要なしとの安倍総理発言には、根拠がないわけではない。それは内閣府が毎年2回、ロールオーバーをして公表している「中長期の経済財政に関する試算」である。その中の楽観シナリオ、つまり、アベノミクスが十分に奏功して実現する「成長実現ケース」について本年7月に改定された最新版が下図である。
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ここでは、今回の消費増税以降、消費増税なしでも、また、今後の高齢化による社会消費費の拡大を織り込んでも、2027年度には財政再建目標とされてきたプライマリーバランスが達成され、今から10年後の2018年度にかけて公債等の対GDP比率が着実に低下していく姿が示されている。
ただ、問題は、そこで想定されている前提にある。
一つは、日本経済の全要素生産性の上昇率が足元の0.3%から1.2%(デフレに入る前の実績)へと上昇するということ。もう一つは、長期金利の想定である。2024年度までの今後5年にわたりゼロ%台の異常な低金利が継続することになっており、名目経済成長率は3%台へとアップしていく。
正常な経済のもとでは金利が成長率を上回っているのが通例であり、少なくとも日本経済がデフレから脱却し、2%のインフレ目標を達成した暁には、この状態になる。逆に、金利が成長率を相当程度下回っていれば、プライマリーバランスが達成されていなくても財政は自動的に改善していく。内閣府試算は、いくつかの経済指標についてこういう前提を置けば、財政はこうなるという、当たり前の、いわばトートロジーに過ぎない。問題は、足元の異常な低金利状態を、バブルや金融市場の機能不全を回避しつつ、いつまで継続できるのか、そして、ここで示されたような高い経済成長率をどう実現するかにこそある。

●財政運営の改革に関する松田学の3つの提案と消費税率1%アップ案
積極財政派を採る私の立場は、有為な政府投資の拡大によって安倍政権が理想とする成長経路を実現しようとすることにある。当面の財政運営改革案として、私は下図の3つを提案している。
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このうち1.の「財政法4条の改正」については、現行の財政法で許されている「建設国債」の対象が出資金、貸付金以外は「公共事業」というトンカチ事業に限定されており、それは実物しか資産として評価できなかった前時代の遺物であるということだ。いまや無形資産がGDPに大きく寄与している時代に財政会計も合わせ、科学技術振興や人的資産の形成などのwise spendingに広く資産性を認めて、これらもバランスシートに取り込むことで「投資国債」を増発すべきだというのが、財政法4条改正案の考え方である。
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もう一つ3.「60年国債」については、本ブログで既に詳しく論じているので、こちらをご参照いただきたい。↓
https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12522744943.html

これらの中で違和感があるのは、2.の「毎年度1%ずつの消費税率引上げ」案であろう。これを紹介した10月8日配信のチャンネル桜のビデオレター(後掲の動画)に対しては、数多くの批判的な書き込みをいただいた。
しかし、私が言いたかったのは、仮に、他の積極財政案によって理想の成長経路が実現しない悲観シナリオが現実となった場合において、経済と財政を両立させつつ社会保障財源を確保する次善の代替案が現にあり、実際に議論されているということである。
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実は、消費増税にも色々な案がある。そもそもデフレ対策の基本は、マイナス金利政策にもみられるように、通貨価値を落とすことにある。例えば、今後毎年1%ずつの消費税率引上げを決めれば、自分の持つおカネの購買力が減ると消費者が予想することにより、恒常的な駆け込み需要がなだらかに生まれ、景気を刺激し続けることになる。
事業者の側でも、毎年1%という数字のもと、これを合理化で飲み込む「生産性1%向上運動」を展開すれば、日本経済の生産性も上昇する。そのために必要なのは、毎年度の税率変更に対応できるソフトを全事業者に配布することだ。これで、一部の論者が主張するような、不景気のときは消費税率を引き下げるという政策を弾力的に行うことも可能になるのである。諸外国の付加価値税率の推移をみても、日本より高い税率のもとで、フランスやイギリスも、カナダや中国なども、税率の引下げを実施した事例がある。(財務省HPを参照)↓。

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/103.pdf

人口減少で高い経済成長の再現を実現できない日本では、10%より先の消費税率引上げは逃れられない日本の宿命として堂々と受け止め、では、どこまで引き上げなくて済むようにするのか、景気を刺激する政策とどう組み合わせるのかなど、クリエーティブな議論へと早く歩を進めるべきなのかもしれない。
ただ、その前に、世界経済が不透明感を増す現状に鑑みても、まずは機動的な政府投資の発動が求められているのであり、これを可能にする仕組みへと財政運営のあり方を改革することが急務であろう。今臨時国会では、安倍総理が所信表明演説でも述べたとおり、国会論戦が令和時代の新しい国創りに向けた本質的な議論となることを期待するものである。

【参考】チャンネル桜ビデオレター
「財政再建のアテが外れた財務省、では私から経済と財政を両立させる提案を」10月8日配信↓

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プロフィール

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Author:matsuda-manabu
松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。