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悪化する日韓関係とGSOMIA破棄~可哀そうなのは韓国民?~松田学の論考

●韓国が仕掛ける常套手段、国際情報戦
今回に限らず毎回のことであるが、韓国との間に問題が起きるたびに感じるのは、国際情報戦における日本の弱さである。今般の日本の貿易管理措置に対しても、韓国は「半導体への日本による規制で、世界中のスマホの値段が上がる」などと国際的プロパガンダを展開しているそうである。

歴史認識も従軍慰安婦問題も、いずれが正義なのかは、何が真実なのかよりも国際世論がどう思うかで決まることを日本は何度も経験してきた。現在の日韓関係についても、こうした国際情報戦にどう対処するかに日本は向き合わなければならなくなっている。

スマホの値段と世界の安全保障と、どちらが大事なのか?これは日本が対抗的に打ち出すべき「カウンターナラティブ」であろう。

松田政策研究所では、国際情報戦の専門家である山岡鉄秀・AJCN代表との対談を発信したが、同氏の話によれば、残念なことに、日本の閣僚たちの日本語的な発想での発言では、正義も真実も海外メディアには伝わらないようだ。例えば「安全保障のために輸出管理を行うのは国際社会における日本の役割だ…」(河野外相)なども、韓国とは関係のないドメスティックな都合でやっている…ととられてしまうとのこと。

こういう時は、協議を申し入れたが、韓国は出てこなかった、我々は待っていた、この措置はWe are forced to…やむを得ない措置だった、と直ちに応じ、具体的な事実を突きつけて解釈の余地を与えない反論を即座に行う必要がある。

突き付けるべき事実としては、①文在寅政権になってから韓国からの不正輸出の摘発数が急増、②繰り返し密輸をしている企業があるが、刑事罰はどこにも科されていない、③イランなどへの不正輸出の事案が現にある、④フッ化水素で行き先が分かっているのは70%で、残りの30%を追及しても明確な回答はない、⑤協議をもちかけても韓国は応じなかった。

日本政府は恐らく、米国政府やWTOなどにはきちんと根回しをしてきたものと想像されるが、国際世論の上で大事なのは、世界で報道される日本政府トップの発言である。国内で通用するのとは異なる明快な論理で、間髪を入れずにメッセージを発する用意が欠かせない。これは重大な国益に関わる重大問題だ。国際世論危機管理能力の構築が急がれる。

●GSOMIAの破棄とは
そして韓国はついに、8月22日、日本との間のGSOMIAの破棄を決定するに至った。

これは、軍事情報についての秘密を相互に守ることによって、情報交換を円滑にしようとするものである。日本はかねてから日米同盟のもとに米国との間にはこうした関係があり、韓国も米国との間では米韓同盟となっているため、日本は米国を介して韓国とは「半同盟関係」にあるとされてきた。その中で、日本と韓国との間の安全保障上の協定は、本GSOMIAのみである。

ただ、実際にこの協定を通じて韓国との間で交換されてきた情報の内容は、専ら、北朝鮮のミサイル関係のものであり、日本としては世界で最も精度の高い情報を米国から得てきたため、実害はほとんどないとされる。一部に、北朝鮮の工作員や拉致被害者に関する情報もあるのではないかとの懸念もあるが、そうした内容は一切、含まれていない。むしろ、日本のイージス艦などから得られる精度の高い情報を韓国は米国を介してしか得られなくなるなど、韓国側のほうがデメリットが大きいとされる。
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但し、これは秘密を守ることを約束する協定であるから、これまで日本から韓国に渡った情報が他国(北朝鮮、中国、ロシアなど?)に漏れることになる懸念を指摘する向きもある。また、いざ有事となった場合は、情報共有の即時性が強く問われることになるため、この点での円滑性が損なわれる可能性は否定できない。北朝鮮も中国も大歓迎であろう。

●日本の立場と韓国からの言いがかり
どう考えても自身のためにならない韓国の決定だが、ここでその経緯を振り返ってみる。

まず、世界の安全保障のために、大量破壊兵器に転用可能な物資の輸出管理体制が不備な韓国に日本政府が何度協議を申し入れても、応じなかったのは韓国側であった。次のPPに、日本が今回の措置をとることとなった「経緯」について世耕経済産業大臣がツイートした内容を記載したが、このうち、③の、いわゆる徴用工問題は不要であろう。
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この韓国側の国際法違反問題がなくても、純粋な貿易管理の世界だけでも、ホワイト国として例外扱いすることで一件ごとの個別審査を省略する例外的な優遇措置を韓国に与え続けるだけの信頼関係は、十分に損なわれている状況であった。むしろ、この措置が日韓基本条約違反に対する日本側の対抗措置との文脈で理解されることで、多くの誤解を与えることになった。日本政府は早い段階から、もっと丁寧な説明を発信すべきだった。

今回の日本の措置は、かつての大量破壊兵器に関する対共産圏輸出規制COCOMに代わるワッセナーアレンジメントという国際協定を誠実に履行するものだった。
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その履行のために、不正輸出が認められ、かつ、かつては協議によって是正措置を約してきた韓国が、この3年ほどは協議にも応じてこなかった状況に鑑み、ホワイト国指定を外して通常の一件ごとの輸出審査に戻すのは、日本の義務でもある。

ちなみに、欧州はどの国も韓国をホワイト国には指定していない。日本はアジアの国の中では唯一韓国のみ、指定してきた。「ホワイト国」は正式には「グループA」と称することとなったが、日本が指定しているのは現時点で、欧州各国や米、加、豪、NZ、アルゼンチンの26カ国である。韓国は今回の日本の措置をWTO違反としているが、世界には日本以外に195カ国がある中で、日本は26カ国以外の国々に対してWTO違反をしているとでも言うのだろうか。

グループAからの除外措置は、あくまで日本が追い込まれたものであり、日本から能動的に仕掛けたものではなく、徴用工問題とも本質的には無関係である。輸出禁止措置でもない。現に、まずはフッ化水素等の3品目について講じられた個別輸出審査においては、すでに輸出許可が出された事例が出ている。
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にも関わらず、韓国はこれに対抗して、自らWTO違反と非難していたはずの貿易管理措置(キャッチオール規制)を日本に対し、法的根拠が不明なまま打ち出した。そして、日本から協議を申し出れば応じてやるとの文在寅大統領からの不遜なメッセージに対して日本側が反応しなかったからと、今回のGSOMIA破棄の暴挙に出た。

日本が安全保障を理由に両国間に信頼関係がないと言うなら、安全保障のための協定であるGSOMIAも、これを続けるだけの信頼関係がないことになる…と、ああ言えばこう言う。自己正当化のために相手に責任転嫁する恥も外聞もない屁理屈を重ねる韓国は、国際的信用が地に堕ち、お家芸の国際情報戦も今後は効かなくなるのではないか。

●可哀そうなのは韓国の国民
自分で自分の首を絞める韓国の一連の動きで最も可哀そうなのは韓国民かもしれない。

自由主義陣営にとって北東アジアの安全保障の要(かなめ)とされるのが日米韓の三角形であり、これを崩すのが今回の措置だ。この措置を合理的に説明しようとすれば、文在寅大統領がいよいよ、北朝鮮主導による南北統一の方向を明確に示したものと解するしかないのかもしれない。

しかし、北朝鮮はと言えば、米国の方しか見ていない金正恩も最近は韓国に対して厳しく当たるようになっており、現在も弾道ミサイルの発射を繰り返しているように、韓国民にとってハッピーな統一に果たしてなるのか疑問であろう。GSOMIAの破棄を北朝鮮は歓迎し、この措置で最も利を得る国は中国だとされている。少なくとも韓国民にとっての安全保障が後退するのは間違いない。

国内政治面でも、経済の不振(最近は側近の不祥事?)で支持率が低迷する文政権が、日韓関係を政治的に利用しているのは明らかである。政治が偏狭なナショナリズムを煽り、これを利用してポピュリズムと結びつければ、国を誤るのが常だ。

韓国の保守野党「自由韓国党」によれば、文政権の政府は自由民主主義国家の行政府ではなく、左派独裁政権のもと、司法府だけでなく国会まで占拠される勢いであるとのこと。麗澤大学客員教授の西岡力氏によれば、来年春の総選挙に向けて、与党が半永久的に政権を維持できるとされる選挙制度と、政府与党に不利な捜査を不可能にし、野党保守勢力の摘発強化につながる機関の新設が準備されつつあるそうである。

韓国民は文政権のもとで民主主義も失うのか。
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経済面でも、素材や部品などの生産財の日本への依存体質から脱却できないでいるのが韓国経済である。日本側の単なる個別審査措置にあれだけ大騒ぎするのも、半導体生産に必要な物資を輸入して中国に売らなければ経済が回らない構造だからであろう。
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経済失政による韓国経済の不振も、現在のウォン安の状態で挽回するのは、日本の助けなくしては困難である。すなわち、さらなるウォン安や資本流出を起こさずに金融緩和によって景気を刺激するには、これによって起こりかねないとされる通貨危機の歯止めとなる日韓通貨スワップ協定が必要となるが、その再開は、この情勢ではもはや望み薄だろう。

韓国民は雇用も失うことになるのか。

自国の愚行の責任を日本になすりつける韓国世論は、そもそも韓国民には客観的な事実が伝わっているのかと思わせるものがある。正しい情報にもアクセスできない韓国民なのか。事実が伝わっているとしても、長年にわたる反日教育で、それを曲解する思考回路しか植え付けられていないとすれば、それも韓国民にとっての不幸であろう。
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最近の韓国でベストセラーとなり、話題となっている「反日種族主義」という本には、「歴史問題に関する嘘や無知、誤解に基づく韓国の『反日』は、未発達な精神文化の表れであり、これを克服しなければ韓国社会の発展はない」と記載されているそうである。

自国の客観的状況も認識できず、自分の利益も分からない哀れな韓国民なのか。

●日本は韓国にどう向き合うべきなのか
ルールを守るのが日本や国際社会の価値観なのに対し、日韓基本条約に平気で違反する韓国の価値観とは、間違ったルールは破る…。
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そもそも異質な民族が平和的に共存する基礎は「法の支配」である。韓国がルールを破る国である限り、いずれ国際社会から抹殺されかねない。自国の運命は自ら決する民族自決の原則からいけば、自殺国家をめざすのも韓国民にとっての選択の自由なのかもしれないが、せめて他国には迷惑をかけないでほしいものである。

今回の措置に最も怒っているのは米国だとされるように、今後、ユーラシア大陸は、上海条約機構(中露など)の影響力が一層強まる地域になるのか。朝鮮半島の「赤化」で、日本や米国、自由主義陣営全体にとって、中国の覇権がますます大きな脅威になるのか。ソリューションは文政権の転覆?最近では、クーデター説も一部で囁かれていると聞く。

いずれにしても、現在のような日韓関係の悪化で日本が失うものは、韓国に比べれば大きくなく、最近の日韓関係の全般を振り返ってみても、韓国は日本にとって同じ土俵で喧嘩をする相手ではないと思われる。韓国が仕掛ける国際情報戦に対抗するタクティクスは必要であるが、日本が採るべき基本姿勢は、ルールを守ることの大切さを諭しつつ、未熟な子どもの成長を見守ることであろう。

その際、相手の立場への配慮や甘い態度は禁物である。逆に韓国をつけあがらせ、日韓関係を損ねるタネを撒き、悪循環をもたらすことを私たちは歴史から学ぶべきかもしれない。「貸すも親切、貸さぬも親切」と言われるとおりではないか。

北朝鮮主導の南北統一であれ、中韓同盟?であれ、悪夢のシナリオとされる事態が文政権のもとで現実味を帯びつつあるようにみえないこともない。日本としては、東アジアの全体秩序の中で自国を取り巻く地政学的な環境の変化にどう向き合うのかを、そろそろ真剣に考えていくべきであろう。
<ご参考まで、次の2つの動画をご紹介します>

〇「文在寅は『無敵の人』」なのか?GSOMIA破棄で韓国民が払う代償と日本の教訓」松田学のビデオレター(チャンネル桜8月27日)

〇「号外【ニュースを斬る!】GSOMIA破棄!自滅する韓国文政権」語り:松田学(松田政策研究所チャンネル)
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プロフィール

matsuda-manabu

Author:matsuda-manabu
松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。