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選べる野党は存在するのか~日本で国政選挙を意味あるものにするための必要条件~松田学の論考

今回の参院選、公約や党首討論、政見放送などを通じて、各党が何を訴えようとしているのかが有権者に概ね伝わってきました。焦点は年金と消費税とされますが、与党の立場は、打ち出の小槌はない、大事なのは働きたい人が働けるようにすること、国民の「安心」のために必要なのは、安定政権の持続で経済全体を良くして様々な政策を着実に実施すること。
 何人かの自民党要路に、そもそも自民党とは何なのかを質したことがあります。共通して返ってくる答は「国民政党」。各界各層の国民の全体を包摂し、それらの声に応え、利益を調整する政党だという意味ですが、確かに、共産主義を除けば保守からリベラルまで幅広い立場を抱え込んだ政党であることは事実です。

例えば、米国では公共事業を推進する立場は「小さな政府」を掲げる保守ではなく、リベラル。かつて民主党のルーズベルト大統領が公共事業を推進した「ニューディール」という言葉自体、保守派は使ってはいけないと米国の関係者から言われたことがあります。しかし、日本では公共事業といえば自民党。かつて小泉総理が「自民党をぶっ壊す」と言った自民党とは、公共事業によるバラマキで票と利権を手にする自民党でした。

そもそも自民党が結党された目的は憲法改正でしたが、両院での3分の2が達成されない間は、それは現実的な目標ではなく、むしろ、3分の2を目指して党勢を拡大するために、広く国民の要望に応え、欧州でいえば社会民主党的な色彩の強い政策を推進してきたと解釈できないこともありません。その間に、いつの間にか、全ての国民の要望に対応できるデパートのような存在になったということでしょうか。
いまの野党の中でもどちらかといえば保守の立場に立ち、「是々非々」を唱える維新は、自分たちを「や」党でも「よ」党でもない「ゆ」党だと称していますが、その維新として政権に対して「是」の部分が多いのも、安倍政権が同じ自民党の中でも改革派だからだそうです。自民党内における財政運営の立場も、消費増税を二度延期した安倍政権は財政再建派が主流の党内では孤立してきました。そうであるがゆえに、2014年に安倍総理は衆院解散に出たというのが真相だとも言われています。
現に自公政権は、野党が提案する政策まで幅広く取り込んで、実現してきました。自民党が自由市場主義やグローバリズム、あるいは経済界よりの立場をとる場合でも、いまの野党が参院選でも拠って立っている家計や弱者の立場を、同じく与党である公明党が代弁することで、政権与党は全体として野党がつけ入る隙を与えていないという現象もみられます。

結局のところ、日本の政治は、政権与党それ自体が、政策や理念を軸にすることで選択された政党ではないのかもしれません。体制は異なりますが、自民党は、中国やかつてのソ連の共産党のように、一政党の枠組みを超えて、国家の機能に不可欠な機構として社会に定着した存在にすら見えます。
だとすると、選挙で国民が野党を選択する意味があるためには、何が必要なのか。少なくとも、野党が提案する政策に現実的な財源案が伴う必要があるでしょう。
与党のもとで実現していない政策の多くは「言っていることは誰もがやってほしいことだが、増税でもしないと財源がない」です。野党が与党との違いをアピールできるとすれば、自分たちが政権をとった場合には、こうした社会層に対する財政支出は切って、別の社会層に対する支出の財源にする、それができないなら、自分が支援する社会層のために国民に新たな負担を求める、それは自分たちならこういう理由でできるのだ、ということを示さなければ、結局、先立つものがないからできないものはできなかった、で終わりです。

しかし、10月の消費増税に反対している野党各党の今回の公約では、教育無償化や低年金者への給付金など、公共サービスを拡充したり、家計負担を軽減したりする措置がズラリと並んでいますが、上記の程度までに具体的な財源の措置に踏み込んでいるのは、共産党ぐらいです。ほかには、国民民主党の「子ども国債」や、維新の行革で財源を生み出すという提案もありますが、抽象論にとどまっています。

ちなみに共産党は、7.5兆円の財源で家計を直接応援するとし、大企業優遇税制の是正で4.0兆円、富裕層優遇税制の是正で3.1兆円など、現実的かどうかを度外視すれば、消費増税に代わる財源の選択肢を提示した形にはなっています。

国民民主は玉木代表自身、公共事業だけでなく、人的資本や科学技術など未来への投資へと建設国債の考え方を広げる提案をしている点で私の主張にも近いのに、公約では触れられていないのが残念。

そもそも野党の財源案については、かつて、無駄の削減や資産の売却などで16.8兆円の財源を生むと公約して政権をとった民主党政権が、実際に政権をとってみたら、それは画餅に終わり、今般の消費増税の基になる三党合意がなされたことを忘れてはなりません。野党の甘言には要注意。

もう一つ、野党を選択する意味があるのは、現政権では性格上、実行できない政策や新しい仕組みの提案があるかどうかです。
この点で、維新は、特定の業界に支援された政党では成長戦略は実行できないと謳い、特に参院選では全国比例で業界代表の色彩の濃い自民党とも、労組という利害を代表する旧民主系とも、違いを打ち出しています。

ただ、維新で注目されるのは、焦点となっている年金に関して、賦課方式から積立方式への移行やマイナンバーの普及による給付付き税額控除の実現を掲げていることでしょう。仕組みの抜本的組み替えが、官僚主導の現在の与党では困難なのは理解できます。

しかし、現役世代からの保険料を高齢世代に配分する現行の賦課方式のもとで、すでに高齢世代はさらに前世代の年金を負担しています。自分の年金給付は自分で積み立てるという積立方式に変えた場合、当面は、彼らの年金の財源がなくなるため、制度の移行期には莫大な増税が必要になるのではないでしょうか。維新は「国鉄清算事業団方式」と言っていますが、曖昧なままです。
傾聴に値いしそうなのは、維新が唱えている給付付き税額控除かもしれません。実は、これは私が維新の国会議員からの要請に応じて、従来のベーシックインカムの主張ではなく、こちらに差し替えるべきだとして吹き込んだものです。松井代表がテレビ討論で「給付付き税額控除」と述べたことに驚いた方も多いようですが、そのナマ番組の朝に、維新の某国会議員から、これで基礎年金も要らなくなるのか、と、確認の電話をいただいたのも私でした。
これは、全ての国民に最低所得を保障し、所得ゼロの人にはその額を支給、勤労意欲を阻害しないよう、所得が増えるに応じて支給額を減少させ、財源は一定以上の所得の方からの税収で賄う方式です。社会保障の中軸にこれを置けば、税金を一定のルールで配分するだけの仕組みなので、行政が大きく簡素化されることも期待できます。
その他、維新からは、官僚主導の与党では困難な大胆な仕組みの組み替えが多々、提案されています。

しかし、この、国政の現場にいない地方の首長が代表者である維新、かつては私も所属議員として国会の場で貢献し、現在も私の意見を参考にする国会議員が何人か存在する政党ですが、地域政党から真の国政政党への脱皮は未だにできていないようです。国政の現場と、最終的な実権を握る松井代表の大阪軸の維新との乖離が牢固として存在。松井代表曰く、大阪で成功した改革を国政で実行する…。まだそんなことをテレビで言っています。

以上のように既成の政党がパッとしないと、欧州もそうですが、その間隙で勢力を拡大するのがポピュリズム政党。特に、新興の「れいわ新選組」が消費税廃止などを掲げて躍進しています。しかし、インフレ目標達成までは国債増発を続けるとの彼らのMMT的な政策は、もう一段のバージョンアップなくしては、毒薬のまま。私には答がありますが…。
有権者は今回の参院選でいったい何を選択するのか…。松田政策研究所動画チャンネルでは、「ニュースを切る」として私が語る2つの番組を配信しています。
一つは年金。給付付き税額控除とは何かについても解説しています。もう一つは、消費増税をめぐる論点整理。
こちらからぜひ、ご覧ください↓↓↓

〇号外【ニュースを切る!】参院選始まる、松田学が年金を切る!~給付付き税額控除を考える~


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Author:matsuda-manabu
松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。