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令和新時代の新しい国づくり~松田学の論考~

令和元年あけましておめでとうございます。

初春の令月にして 気淑く(きよく)風和ぎ(やわらぎ) 梅は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披き(ひらき) 蘭(らん)は珮後(はいご)の香(こう)を薫す(かおらす)

歴史上初めて国書(万葉集)を典拠とする元号になりましたが、「梅のように咲き誇る花を咲かせる日本でありたい」、「明日への希望に花を大きく咲かせることができる時代を創りたい」との安倍総理の思いのとおりの時代となることを祈るものです。
折しも、元号が変わる今年、日本はちょうど時代が大きく転換する時期に、新しい時代を迎えることになったようです。20190501 ●世界の3大潮流の大転換…グローバリゼーションから米中ブロックへの分断へ
平成時代は、1989年のマルタ会談で米ソ冷戦体制が終結した年から始まった時代でした。この間、世界は、①これによって本格化するグローバリゼーションと、②インターネット革命と、③金融主導経済という3つの大潮流が支配した30年でした。これらは資本主義経済に新たな成長領域をもたらすイノベーションでしたが、他方でモノ、ヒト、カネ、情報が国境を越えて激しく行き交うことが新たな問題を引き起こしました。  

格差を拡大させ、多くの先進国で難民の増大と中間層の没落をもたらし、健全な民主主義を危機に直面させました。その象徴が英国のブレグジット。国民投票後の政治の混乱の中で「合意なき離脱」のリスクが継続しています。歴史的に民主主義の範とされてきた英国も、得意の民主主義で躓いたようです。

これからの令和時代に予想されるのは、これら3つの大潮流の大変化ではないかと思います。まず、①のグローバリゼーションは、米中冷戦構造への移行による世界の分断、米中ブロック化へと逆転し、今後、世界各国は、米国と中国のいずれを選ぶのか、踏み絵を踏まされていく可能性があります。これはトランプ政権後も継続する米国の長期的な方針だと考えたほうがよいでしょう。

しかし、西側とほとんど経済関係のなかったソ連が相手の米ソ冷戦時代とは異なり、現在の世界経済は巨大なマーケットとサプライチェーンによって、中国との間で緊密な相互依存関係に組み込まれています。その中での分断は世界経済のリスク要因になります。早速、これが、順調だった世界経済に暗雲をもたらしています。

世界が米国「自由主義」秩序圏と、中国「一帯一路」秩序圏に分断される中で、今後、日本も含め米国を選択する国々には、サプライチェーンの組み替えが求められることになります。しかし、それが短期間に円滑に進むとは限らず、各国の経済は次の秩序に移行する過程に伴う苦しみを味わうことになりかねません。

●インターネット革命からブロックチェーン革命へ、金融主導から電子データ主導へ
次に、②の何十年にもわたって続いてきたインターネット革命は、今後、これも何十年かをかけて進むであろう「ブロックチェーン革命」へと、新局面に移行していくと考えられます。これまで人類社会を発展させたのは、企業社会であれ、金融であれ、国家であれ、中央管理者への信用によって成り立ってきた中央集権的なシステムでした。21世紀は、ブロックチェーン技術が可能にする分散型社会システムへとパラダイムシフトが起こるとされています。
日本にまだ残されている生き残りの道は、未だ未成熟なこの技術を諸々の社会的課題解決に適用してイノベーションを起こしていくことを先導し、各分野で世界標準をとっていくことかもしれません。

そして、③の金融主導経済は、すでに電子データ主導経済へと転換しつつあります。米国のプラットフォーマー、GAFAにネットフリックスを加えた「FAANG」だけで、すでに売上高は日本のGDPの3分の2に。かつて国際政治や経済を決める戦略分野は一次産品(食料、金、石油など)でしたが、冷戦体制崩壊後、世界各国の貯蓄をマネージすることに戦略の重点を置くようになった米国の主導で、戦略分野は金融に転換していました。日本の大蔵省解体などのレジームチェンジも、この流れの中で進んだ面があります。
それがいまや、情報技術の急速な進歩で、世界の覇権争いが電子データをめぐる米中覇権争いへと転換した現在、個人データをも国家主導で扱える中国のレジームそのものが、個人情報保護と自由市場経済を軸とする米欧日にとっては、経済面の競争だけでなく安全保障面でも大きな脅威となっています。これが世界の米中分断構造を必然化させる要因にもなっています。

●平成から令和へ~日本の3つの転換~
では、日本はどのような時代的転機を迎えるのでしょうか。平成時代の日本は、(ⅰ)ストーリーの喪失、(ⅱ)人口構成の高齢化、(ⅲ)「改革」の模索の30年でした。

まず(ⅰ)ですが、かつては「右肩上がり」の物語、そして「バブル」の物語(赤信号みなにで渡れば恐くない)が支配した日本は、バブルの崩壊から平成時代を迎えました。その後、日本は「構造改革」?という、日本人が必ずしも心から納得しない建前とコンプライアンスの時代に入ったといえるかもしれません。「青信号、誰も渡らないから自分も渡らない」で官民とも委縮し、リスクテイクが停滞しました。

令和時代は、いよいよ「課題先進国」としての日本がさまざまな社会的な課題解決において日本ならではのモデルを構築し、それによって創られる「日本新秩序」が世界に自然と伝播することで「世界新秩序」につながるような国になることを期待したいものです。前記のブロックチェーン革命を先導することが、その上でも大きな力になるでしょう。

ちなみに、私は日本新秩序として「不老長寿の国」(健康)、「豊芦原瑞穂の国」(食、生活の質)、「日出国(ひいずるくに)」(環境の価値と独立自尊の新エネルギー体系)の3つを日本が先導する21世紀型価値の「三種の神器」として提案してきました。

次に(ⅱ)ですが、平成元年に消費税が導入されたことが象徴するように、平成時代は日本が人口減少、超高齢社会へと移行した時代でした。政界も、社会保障費の増大と現役世代一人当たりの負担増にどう向き合うかを問われ、消費増税や財政再建を巡って政局が展開することになりました。

この面で令和時代の日本に問われるのは、社会保障の財源問題の解決だけではありません。超高齢化に加えてAI(人工知能)革命で深刻化していく問題、すなわち、人々が従来の産業社会(カイシャ人間)の外側で、各々の生き甲斐を追求できる社会の仕組みをどう構築し、活力を増進していくのか、これも日本ならではの答を出していくべきです。
「活力ある超高齢社会の運営モデル」を世界に先駆けて構築するだけでなく、個人と国家の間に介在する共同体をどう構築していくのか。これは政治が国民に対して選択肢を示すべき重要なテーマになるべきものです。

これから進むAI化でますます格差が拡大し、資本主義経済から多数の人々が溢れ出ていく。そうした社会層やリタイア後に長い人生が残された多数の人々が、自らの価値を追求し、それに共鳴する人々が支えていく「協働型コモンズ」を構築していくべきです。これは情報技術の進歩が可能にする「和」と「協調」を旨とする日本型共同体であり、私が近著「いま知っておきたい『みらいのお金』の話」でも提起したとおり、資本主義を超えて、それと並立する形で営まれる新たな社会の姿だと考えています。
人間には「競争」と「協働」の両側面がありますが、令和時代は、競争だけでなく、協働ということに軸が移っていく時代ではないかと思います。

そして、(ⅲ)については、日本の平成時代は、(ⅰ)や(ⅱ)で高まった閉塞感や先行き不透明感の中で、政治も経済も社会も「改革、改革」が叫ばれた時代でもありました。しかし、その多くは夢のある未来像や、人々が納得できるストーリーを欠いたままで、安倍総理が自ら唱える「新しい国づくり」も未だ、その具体的な中身が示されていません。

これについて私は、上述のような方向を実現するためにも、何事も一つのシステムに収斂させず、複数の仕組みを組み合わせて並立させる「デュアルシステム」の設計が必要だと考えています。前記の「協働型コモンズ」を競争型の資本主義社会と並立させるのもそうですが、同時に、21世紀型の分散型社会を、より強力な国家機能と並立させることも重要だと考えています。

昭和時代の戦争が日本国民のトラウマとなって、「戦後レジーム」のもと、日本人は国家機能の強化に対して大きなアレルギーを示してきました。しかし、平成時代は、軍事面以外にも、日本がいまや世界一災害大国になるなど、ますます多発する激甚自然災害や、グローバル化、サイバー空間など情報技術の急速な進展などがもたらすリスクが増大した時代でもありました。すなわち、危機管理が重要なテーマとなった時代でもありました。

令和時代は、日本人がかつてのトラウマから卒業し、危機管理に正面から向き合う時代といえるかもしれません。国家には民間ではできない、国家にしかできない機能があるから、国家が存在する意味があります。危機管理はその重要な分野です。国民の安全安心のために、多国に比して弱い日本の国家機能を再構築していくことも大きな課題でしょう。

●令(うるわ)しく和す~次なる飛躍と新たな物語の時代に
さて、前述のように経済面では不安がある中で迎えることになった令和時代ですが、外交面では、日本は自国が国際社会における外交プラットフォームになる中で新時代を迎えることとなりました。欧米の政治は混乱しています。ブレグジットで英国がダウンし、元来は社会主義の国であるフランスはマクロン政権の改革路線で混乱し、ドイツのメルケルは指導力が低下、そして、米国は世界秩序の運営者から撤退して一国主義に…。

いまや首脳国の首脳の中でトランプとまともに話ができるのは安倍総理だけとも言われる中で強まった日本の外交力が発揮される場が、令和時代入りの直後から目白押しです。天皇陛下の御即位に伴い、今年は世界から元首や首脳が来日、4月に続き、5月、6月と安倍-トランプ会談が開かれることになります。しかも今年は日本がG20の議長国、それは日本が世界のルール形成を主導する場になるものです。欧州首脳とトランプとの間の分断、そして、日米欧と中国・ロシアとの分断、それら分断を超えた中継点として日本が機能できる場が、日本に設けられる。秋にはラグビーワールドカップ、そして来年は東京五輪…。

平成時代はその名のとおり、日本が戦争を経験しなかった平和な時代だったと総括されますが、「令和」には、「令しく(うるわしく)和す」、つまり、ぼんやりした平和ではなく、うるわしい平和を築くという意味があるそうです。まさに、うるわしく和する世界へと、日本が持ち前の課題解決力をもって積極的に貢献する国になることを期待したいものです。

停滞したとされる平成時代も、考えようによっては、次なる飛躍を前にした逡巡と、新たな物語に向けた準備の時代だったのかもしれません。令和時代を迎え、前時代についてそんな総括ができるような新時代を、日本が築くことができることを祈るものです。

ご参考までに、松田政策研究所ユーチューブ動画チャンネル、最近の一連の動画を下記に掲載しました。ゴールデンウィーク中にも、ゆっくりとご視聴いただければと存じます。

その1
https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12458207957.html
その2
https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12458210536.html
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Author:matsuda-manabu
松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。

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