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消費増税について(その2)~客観的な議論を:必要なのはメリハリと国民納得の仕組み~松田学の論考

消費増税が景気にマイナスにならないようにする工夫はあるのか。前回(その1)では、日本でなぜ、消費増税がこんなに景気にマイナスになるのか、そり特殊事情と、マイナス回避策について触れてみました。
前回(その2)は、こちらです↓
https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12429319601.html

その最後のほうで、消費増税は私たち世代の道義の実現を目的とするものであり、次の将来に負担を付け回して次の世代に依存する我々世代の矜持と責任感が問われていると述べました。こうした自立と誇りは保守の基本的な立場のはずです。

●金利が成長率より低い状態を永続できなければ将来世代の負担は増える。
しかし、私が主催する某保守系の勉強会で講師としてこのことを述べたところ、参加者の方から、「私の考えは違う。インフレになれば国債の価値は下がるから、将来世代の負担にならない。」と、堂々と?反論されました。
これを聞いた私は、保守系の方々には、自らの思いもさることながら、まずはきちんと事実を認識してほしいと思った次第です。というのは、その理屈が成り立つためには、金利が経済成長率よりも低い現在の異常な状況を永続させる必要があり、そうでなければ、算数のレベルで計算が合わなくなるからです。1+1が2でないと主張するなら、その理由を説明する責任があると思います。
この問題は、インフレ率+実質経済成長率=名目GDP成長率ですが、国債残高の名目GDPに対する比率が低下するためには、プライマリーバランスが達成されて、しかも、金利が成長率がかなり低いという状況が永続するかどうかという問題です。

つまり、まずはプライマリーバランスが達成される必要がありますが、その状態のもとでは、毎年度の国債発行額は毎年度の国債費、つまり、国債の元本償還費+国債利払費と一致しますので、毎年度の国債残高の増加は、利払費の額と一致します(元本償還に充てられる国債は、同額の国債を消滅させますので、国債残高の増加にならないため)。
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この状態のもとでは、金利が名目成長率と一致すれば、国債発行残高の増加は名目GDPの成長の速度と一致しますので、国債残高の対GDP比率は一定になりますが、金利が成長率よりも高ければ、その比率は上がっていきます。これは下図の数式から自動的に導かれる、誰も否定できない、逃れられない結論です。
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問題は、通常、金利は成長率よりも高く、近年、日本でこうなったのは、名目GDP成長率が4%に達していたバブルときと、今回の異次元の金融緩和のときだけということです。この状態が長引くと、その帰結はバブルであり、バブルは必ず崩壊します。また失われた10年ということになりかねません。
安倍政権のもとで内閣府が中長期試算を公表していますが、2018年7月時点の試算では、アベノミクスが成功して名目成長率が3.5%へと向かっていく「成長実現ケース」においては、2027年度に向けて毎年度、公債等の対GDP比率が低下していく姿が示されています。
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しかし、金利が成長率より低いという想定さえおけば、この比率は必ず改善していきます。この想定を今から9年後の2027年度まで続くという前提のもとに比率が下がっていくというのは、いわばトートロジーで、何も言ったことになりません。論点は、そんな状態をどうやって9年間も続けられるのか、という点にこそあるからです。
将来世代の負担にならないとおっしゃる方は、どうしてそのようなことが成り立つのか、未来永劫。金利が成長率湯よりも低い経済をどう実現するのかを言わなければならないはずなのです。

●赤字国債は減らしても投資国債を増やすツイスト・オペレーション
もう一つ、私の講演に対する疑問が出されたのは、消費増税によって次世代へのツケ、つまり赤字国債を減らした場合、その状態が恒久化すれば、国債発行額は減少した状態が続くので、経済にマイナスではないか、という指摘です。こちらは真っ当な議論です。

詳細の説明は省略しますが、マクロ経済バランスでみれば、国債発行額が減少すれば(財政赤字が縮小すれば)、その分、民間投資が増えないと、財政赤字と一致する民間貯蓄超過を縮小させるように経済が動くので、GDPは減少します。
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つまり、財政再建はその分、GDPにはマイナスということになります。
ならば、消費増税で赤字国債が減る分、将来世代に資産を残す建設国債を増発して国債発行額は一定とし、政府投資を増やせばよいことになります。国債発行額は一定としても、一方は減らし、一方は増やす「ツイスト・オペレーション」を私はかねてから提唱してきました。日本では国債の償還は60年かけてなされており、建設国債の場合、60年というのはインフラ等の資産の耐用年数に見合った年数として、その償還負担を、インフラ等の便益を受ける将来世代が少しずつ追うという形で世代間の公平が実現します。
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しかし、将来に資産を残さずツケだけを残す赤字国債が社会保障費の増大で増えているという事態は、60年といえば子や孫の世代にまで償還負担を残すという意味で、若者や、まだ投票権を持たない次世代に大変、酷な状態です。大事なのは、赤字国債を減らすことであり、これをもって財政再建と考え、同じ国債発行でも、その中身を、より生産的で将来世代に対して公平なものにするということではないでしょうか。
そもそも、日本の場合、前回(その2)で解説したように、消費税が国民から国民の間のおカネの移転であるということ自体が、国民には実感されていません。問題は、こうした関係性が国民に「見える化」されていないことにあります。
カネに色目はないとして、消費税も所得税や法人税などの直接税も建設国債も赤字国債も同じ「歳入」、社会保障給付も政府投資も経常的な支出も同じ「歳出」。

私はかねてから、こうしたコミコミどんぶり勘定の一般会計を、投資勘定、経常勘定、社会保障勘定の3つに分割して国民に示すことを提案してきました。
投資勘定では財政運営をバランスシート管理で行い、将来世代に資産を残すための政府投資であれば、その資産に対応するという意味でバランスシート上は合理的な建設国債(公共事業だけでなく、未来への投資という意味で、その対象範囲を広げ、「投資国債」とネーミングしたほうが良いと思います)を弾力的に発行する。こうして、未来の国づくりや国家戦略に必要な投資を政府は必要に応じて行う。
経常勘定では行政の無駄を削ることで赤字国債の発行を抑制する。
社会保障勘定では、例えば同じ国民負担の増大も、年金を削り、医療や介護の自己負担を増やす形で行うのか、次世代への負担を消費増税で減らす道を採るのか、この勘定で受益と負担の関係が見えることにより、国民自らが選択できるようになります。    
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消費増税で赤字国債の発行が減れば、結果として財政再建にも寄与しますが、より重要なのは、これまで消費税収が不足して社会保障に奪われていた国債発行収入を、より戦略的な分野に回し、未来への投資に財源を振り向けられるようになることです。
消費税収が不足して社会保障におカネが奪われ、他のことに充てるおカネという意味では世界で最もおカネのない政府なのが日本です。赤字国債を投資国債に置き換えることで、投資勘定では積極財政の要請にも応えられるようになり、全体でメリハリある財政運営が実現します。
納税者の目線に立って、国民に分かりやすく判断材料を提示する。これが主権在民のもとでの財務省の本来の役割でしょう。いかなる増税も国民の納得が不可欠です。長年にわたる消費増税先送りで将来の国民負担が膨らんでいく事態をくい止めるために、国民の「納得」を軸にした財政の仕組みを構築する。健全な民主主義のインフラになると思います。

●大事なことは金融資産を国内で有効に活かし、世代内相互扶助を実現すること
赤字国債を減らしても投資国債を増発すれば、国債残高は減らない、増える一方ではないかという批判が出るかもしれませんが、心配はありません。日本には家計の1,800兆円以外にも、法人部門で1,200兆円、政府部門も併せて全体で3,600兆円もの金融資産があり、しかも、それは国内では十分に運用しきれず、2017年末で328兆円と、世界最大の対外純資産国となっています。これは世界ダントツ一位で、この座を何十年も日本は維持し続けています。
これは国内で有効におカネが運用されたり使われたりするための工夫が不十分なことを示すとともに、日本には財政破綻に至るまで300兆円以上ものバッファーがあることを示すものです。現に、日本国債は世界一の安全資産として海外から最も魅力的な投資対象となっています。国債を無理に減らさねばならない状態ではありません。
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大事なのは、国内で公的負担によらずに、家計金融資産の大半を保有する高齢世代の中において、持てる高齢者から持たざる高齢者へと、これだけ蓄積された資産がフローのおカネとして社会保障に回っていく仕組みを構築することです。
これによって、これ以上、現役世代の社会保険料負担を増やさず、赤字国債の形で次世代の負担も増やさずに、高齢世代が世代内相互扶助をすることで世代としての自立ほ図ることを考えるべきでしょう。政治が真に考えるべきなのは、そのための社会の仕組みの設計です。ちなみに、近年、消費増税の先送りのために現役世代の社会保険料負担が顕著に増大してきたことも、日本経済の不振の大きな原因です。
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民間は民間で、このような形で金融資産を活用するとしても、政府は政府として、やはり国債発行残高は減らすべきだという議論はあるでしょう。
次回(その3)では、来年度予算と消費税との関係を解説し、この国債残高の問題を抜本解決する「松田プラン」に触れた上で、消費増税反対派への反論と、日本の真の課題について論じたいと思います。

今回掲載するビデオレターは、次の2本です。
松田学のビデオレター、第100回は「リストラと財政への外圧~カルロス・ゴーンと消費増税という痛み」チャンネル桜2018年11月27日放映。
    

松田学のビデオレター、第101回は「消費増税~財政と次世代への責任の「見える化」を」
チャンネル桜2018年12月14日放映。

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プロフィール

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Author:matsuda-manabu
松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。