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松田まなぶの新提案、ヘリコプターマネーと永久国債を使う方法。世界一厳しい減債制度の国だからできる

松田まなぶの新提案、ヘリコプターマネーと永久国債を使う方法。世界一厳しい減債制度の国だからできる。

知恵は使いよう。いま話題の「ヘリコプターマネー」も「永久国債」も、そのままでは現実の政策にはならない「劇薬」です。
しかし、いくつかの原理原則さえ徹底すれば、少しばかりの発想の転換で、意外なところにブレークスルーの道が拓かれるように思います。
なぜなら、日本は世界一厳しい財政規律として国債の60年償還ルールという「減債制度」を営んでいるからです。これは他国に例がありません。
しかし、現実には、このルールを営むために、毎年度の赤字国債新規発行額が膨らんでいます。何かおかしいです。ここに、永久国債を導入して国民生活や実体経済におカネを回す余地があるのではないか。それが私の提案です。



この提案を本邦初で示したのが、本年8月20日、都内某所で開かれた勉強会「あてな倶楽部」で講師をしたときでした。題して、「永久国債とヘリコプターマネー~日銀の異次元緩和のメカニズムと新たな財政財源の可能性~」。
 皆さん、日頃から関心の高い方々でしたので、2時間かけてじっくりとお話しました。長いですが、この本文の最後に動画を掲載しています。
 以下、ごく簡単に、新提案のエッセンスを解説します。
 講演でも勉強会でも講師としてお呼びいただければ、可能な限り、出かけていきます。



●ヘリコプターマネーによる財政再建が進行中
 まず、最近の金融経済の閉塞感の中で話題になっているヘリコプターマネーですが、それは政府紙幣や日銀券を市中にばら撒くことだけを意味するものではありません。
政府の債務を通貨に変えることもヘリコプターマネーの一種です。
それであれば、今、アベノミクスが日銀による国債の「爆買い」を通じて大規模に実施しています。
 
政府と日銀を連結して「統合政府ベース」で捉えると、今の異次元の金融緩和で日銀が国債保有額を増やしている分だけ、財政再建効果が生じています。これは安倍政権の成果です。
つまり、日銀が市中から国債を購入すれば、その分、政府の債務は日銀の政府に対する債権となり、統合政府の中では相殺されます。
その分、国債の購入代金が振り込まれる日銀当座預金の形で、日銀の負債が増えます。
これがベースマネー(日銀券残高+日銀当座預金)です。
つまり、統合政府全体の民間に対する負債総額は変わらず、その中で政府の負債はマネーへと変換されます。

加えて、日銀に支払われる国債金利は、それと見合いの日銀当座預金の金利がほぼゼロ(最近では一部にマイナス金利が導入)なので、そのまま日銀の収益として国庫納付されます。
これを通貨発行益と言います。国債利払い費が行って来いで政府に戻り、金利負担もなくなります。

問題が生じるのは、2%の物価目標が達成されて金融緩和が「出口」を迎え、日銀が金融引締めなどの必要に迫られてベースマネーを縮小しようとする時です。
日銀当座預金の縮小のためには、日銀が保有国債を減らす以外、他に有効な方法はほとんどありません。その時、右の財政再建効果は元に戻ってしまいます。


●永久国債で国債を消滅させるマジック
ならば、政府が元本返済の不要な永久国債を発行し、日銀保有国債が満期を迎えるたびにこれに乗り換えていき、日銀に永久に保有させれば、財政再建効果は確定することになります。
しかし、これでは日銀は、異次元緩和で膨らんだベースマネーを永久に縮小できなくなり、将来の金融政策の自由度が制約されてしまいます。
やはり何事にも原理原則や規律が必要です。
そこで、原則の第一として、政府と日銀が協定を結び、物価目標達成の前後で局面を区別することを考えます。統合政府の発想も、上記の「永久国債オペ」も、物価目標達成前の局面に限定し、達成後は日銀の独立性と通常の政策運営に戻します。
第二に、いかなる劇薬も、物価目標達成後の政策を大きく縛らない範囲に限定します。
そして第三に、将来にツケだけを残す赤字国債の償還負担を減らすことをもって、財政規律とすることとします。
現行の国債償還60年ルールは、本来はインフラなど資産を残す建設国債向けのものです。赤字国債はその存在自体が罪であり、本来、できるだけ早く消滅させるべきものではないでしょうか。

●世界に例のない日本の「減債制度」の実態
実は、日本は他国に例のない国債「減債制度」を営んでいます。
通常、国債を償還する財源は国債(借換債)の発行で賄いますが、借換債ではなく税金で償還する部分として、毎年度、国債発行残高の60分の1ずつ、国の一般会計から国債整理基金に「定率繰入」をして、国債を減らすこととしています。
そのため、一般会計には元本返済費として国債発行残高の60分の1に相当する債務償還費を計上しています。これは、今年度当初予算では13.7兆円にのぼります。
しかし、実際には毎年度、この定率繰入を上回る新規国債(今年度34.4兆円)を発行しています。減債制度は機能しておらず、国債は増える一方です。

ここで大事なのは、むしろ、定率繰入をするために、その分、毎年度の赤字国債の発行額が多くなっているということです。これでは本末転倒です。
永久国債オペにより、国債は日銀に封じ込められ、民間に対する公的債務は消滅します。金利負担も実質的にはなくなります。
もし、日銀が保有する国債をすべて赤字国債(及びその借換債)とみなせば、永久国債オペは赤字国債を消滅させます。
これは、前記の財政規律の本旨が実現するものでもあります。
他方、建設国債は将来世代にもインフラなどからの受益があります。世代間の負担の公平の上で、消滅させる合理性は薄いといえます。
今年度予算では、定率繰入(債務償還費)のうち赤字国債の元本返済分は十兆円近くと試算されます。これと同額の「永久国債オペ」をすれば、同額の赤字国債が消滅して事実上の「減債」になります。
そうなれば、その分は定率繰入をする理由がなくなります。
ならば、その財源として増えていた新規赤字国債の発行を十兆円近く減らせることになります。

●国民におカネを届ける方法
ここで国債発行を減らさず、従来通りの新規国債発行を維持すれば、どうなるでしょうか。この十兆円近くを国民生活や実体経済に向けた財政支出に充てられるようになります。

永久国債化で消滅する国債がありますから、国債残高は従来と変わりません。
変わるのは資金の流れです。
これまでは、償還される国債が新規の国債に置き換わる「ストックからストックへ」でした。
これが、消えた国債と同額の新たな国債が財政支出へと回る「ストックからフローへ」に変わります。
日銀が異次元緩和で国債を買うことで民間への負債(ベースマネー)をいくら拡大しても、実体経済の側で実需が増えなければ、肝心の市中マネーはなかなか増えないことを、私たちは現在、経験しています。
市中マネーとは、マネーストックとかマネーサプライと言われるもので、民間銀行の預金と現金の合計です。私たちが手にするおカネです。
この「永久国債オペ」は、実需におカネを回して市中マネーそのものを拡大させるものです。

実は、日本の財政当局が財政規律の根幹に位置づけているのが、前記の減債制度です。決してプライマリーバランスなどではありません。
実際に国債残高を減らす。これほど厳しい財政規律はありませんが、現実からはほど遠いのが実態です。
なのに、なぜ、国債発行額を増やしてもこのルールを続けるのか。毎年度の予算で「理想と現実とのギャップ」を国民に示すためだそうです。

しかしながら、国民の誰もが意識せず、どの国にもなく、実際には機能していないルールを金科玉条とすることで日本経済の首を絞めることと、実質的に国の債務を消滅させつつ、同じおカネを多くの国民の生命や生活を守る救民対策、少子化対策や人的資本への投資、科学技術の振興などに回すこととの、いずれが賢明でしょうか。

もちろん、この永久国債オペにも限度はあります。
その限度として、私は、日銀の保有資産となる永久国債の額を、日銀の永久債務である日銀券の残高以下にとどめることを考えてはてどうかと思っています。
これであれば、資産負債管理の考え方ともつじつまが合います。
現在、日銀券残高は100兆円程度。物価目標2%達成まであと3年としても、永久国債は30兆円にしかなりません。
余裕は十分にありますし、すでに400近い国債を持つ日銀にとって、その程度の額の永久国債保有なら、金融政策は制約を受けません。

ただし、2%目標が達成された暁には、増えた財政支出の財源を恒久財源へと切り替える努力をすべきでしょう。
構造改革が日本経済にとっての最重要課題であることも論を待ちません。
ただ、おカネがもっと回り、個人消費も増えていく経済循環を生まなければ、合理化努力も企業の革新も現実には困難です。

ちょっとした創意工夫で、私たちは自ら首を締めている状態から自らを解放することができる。その一つの事例として、一見、荒唐無稽な永久国債の考え方を提起するものです。
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Author:matsuda-manabu
松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。

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