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松田まなぶの講演、医療の改革についても発言を続けています。

日本の医療システム改革は、松田まなぶが10年近くにわたって取り組んできた大テーマです。
11月28日、長年にわたって親しくしております上昌広・東大医科研教授のグループが毎年開催している「現場からの医療改革推進協議会」の第10回シンポジウムで講演しました。
題して「日本の財政と医療システム再設計~医療・健康マネージメント地域システムの提案~」。



私、松田まなぶは、かつて財務省から東京医科歯科大学教授・学長特別補佐に出向した頃から、言論NPOで創ってきた議論や財務官僚としての経験を踏まえて、医療分野の発言者として活動するようになりました。
「医療崩壊」などと言われた当時から、主として勤務医の皆さまと一緒に、明日の日本の医療を考え、医療現場の立場から改革提案を行ってきました。
日本の医療改革論を主導する多くの方々とのネットワークは現在も続いています。
なかでも、横山禎徳氏、亀田隆明先生(亀田総合病院理事長)、上昌広先生(東大医科研教授)からは、色々な面でお世話になっております。
私のことを応援していただいている国松孝次・元警察庁長官(救急ヘリ病院ネットワーク会長)との出会いも、医療システム改革を提言した私の著書(「競争も平等も超えて」財経詳報社、2008年刊)を、ドクターヘリの普及促進に尽力されている国松元長官が書店で手にとったことがきっかけでした。

私の医療問題へのアプローチは、日本の医療の持続可能性を脅かす医療財源の問題に対して、新しい医療財源システムを提案するところから始まりました。また、地域医療の組み立てについても論を発信し、その実践にも取り組みました。

 (以下、パワーポイントは今回の講演で使用したものの一部です。)


医療を、患者や家族などのエンドユーザーに対して健康や安心といった価値を提供・保証する一つの「社会システム」として再設計することや、日々、厳しい環境のもとで大変な仕事をされている医師や医療従事者の皆さまの努力がもっと報われるような医療を組み立てるにはどうすればいいか、というのが、私の基本的な立場です。



 医療は日本の経済成長にとっても、大きなフロンティアです。
 世界に冠たる国民皆保険制度を維持しつつ、そこにバリューを組み立て、豊富な日本の金融資産ストックが財源として引き寄せられ、医療全体を底上げする仕組みを、私は「三層構造の医療財源システム」として提案してきました。


 地域全体をHospitalとして総合的に「経営」する「機能分化と統合」の提案は、その一環として行っております。


 衆議院議員のときも、私の仲間である在宅医療関係者の要望を受けて、予算委員会分科会で当時の田村憲久・厚労大臣に医療問題に関して質疑をしたことがあります。
 現在は、上田清司知事と相談しながら、「医療・健康マネージメント地域システム特区構想」を推進しています。
 これは、国民の疾病構造が慢性病中心へと変化したことに日本の医療システムが適合できていない状況を改革し、これから日本で最も超高齢化が進む地域であるとともに、人口当たり医師数が全国ワーストワンの埼玉県に、新しいタイプの医学部を新設することで、超高齢社会の課題解決モデルを全国に先駆けて構築しようとするものです。


 このシンポジウムでは、以前にも何度か講演いたしましたが、今回は、医療を巡る財政問題を中心としたセッションに呼ばれ、日本の財政問題と前記の特区構想を中心に講演を依頼されたものです。その後のディスカッションにもパネラーとして参加しました。


 受けた質疑の中で興味深かったのは、「消費税率の引上げは、そのたびに政治が混乱するが、少しずつ引き上げるのではなく、大幅な引上げを一挙にやってしまうべきだ。」という、土屋了介・神奈川県立病院機構理事長からのご意見でした。
 土屋先生には、国立がんセンター中央病院長をされていた頃から、医療改革の議論でご指導いただいています。
 私から、「経済の生産性上昇の範囲で、消費税率を毎年度1%ずつ上げていくことを日本経済に埋め込んでしまうことも一案だ」とお答えしましたところ、賛同されていました。

 私の議論の中心は消費税率引上げではなく、日本が有する莫大な資産ストックを活かす「共助」や「互助」による解決ですが、実際に医療に携わる方々からみれば、消費税率の引上げは喫緊の課題として捉えられるものだと思います。
 消費税は全額、社会保障に充てられますが、その必要額に到底届かず、大半が次の世代での増税へとツケ回しされています。
 こうした公費の財源不足状態のしわ寄せを痛烈に感じているのは、医療や介護の従事者であり、実際に医療や介護の提供体制の不備によって苦しめられている多くの国民です。
反対論の強い消費増税ですが、そのような声が強まっていることにも十分、耳を傾ける必要があると思います。
 だからといって、増税だけに頼るのではなく、いずれ必要な消費税率の引き上げ幅を極力小さくできるための仕組みの設計こそが問われている。これが私の立場です。


以下、本シンポジウムの予告に掲載された今回の私の講演の要点を転記します。

「日本の財政と医療システム再設計~医療・健康マネージメント地域システムの提案~」(要旨)

 アベノミクスに補うべきものがあるとすれば、それは長期的な「持続可能性」である。
 政府はこれまで「中長期の経済財政に関する試算」でも、現在の力づくでの金利抑制の効果の継続で公債等/対GDP比率の低下をギリギリ示せる2023年度までの推計しか提示してこなかった。問題はその先にある。

 団塊の世代の後期高齢者世代入りで医療と介護への財政需要が爆発的に拡大する2024年度以降を視野に入れれば、名目3%の経済成長の永続という超楽観的想定のもとでも、今後10年程度の間に50~60兆円規模での国民負担増(増税か社会保障費の削減)を行わねば、財政の長期的持続可能性は確保されない。
 経済成長と財政とのつじつまは既に合っておらず、これが財政の「不都合な真実」の姿である。
 
 対応策の王道は、日本の3,300兆円の金融資産(世界ダントツ一位の367兆円の対外純資産)をフロー化し、医療システムを中心に社会保障分野に民のおカネが回る仕組みを組み立てることにある。
 その動きを引き出すバリューを医療サイドなどで組み立てるべく、第4回の本協議会では「三層構造の医療財源システム」を提案した。これに加えて今回は、上述の財政問題との関連のもとに、医療財源確保にもつながる政府サイドの新たなファイナンス措置の仕組みとして、政府保証債の活用と日銀基金構想にも触れてみたい。

 しかし、何よりも重要なのは、医療をユーザーサイドを起点にした社会システムと捉え、国民や時代のニーズに応える「地域システム」として再設計することで、効率と効果の最大化を目指すことである。
 それは国民負担増を回避しつつ医療費の合理化を図る上での要諦でもある。
 その一つのモデルとして今回は、現在提案中の「医療・健康マネージメント地域システム特区構想」について取り上げる。

 これは、現在の医療システムそのものが、国民の主要な疾患は感染症というすぐに治る形態の病気だった、1961年の国民皆医療保険制度の導入当時に出来上がったものであり、主要な疾患が慢性病へと変化し、社会の高齢化がこれを促進しているこんにち、時代の変化に応えられるよう再設計が必要な局面にあるとの認識に基づく。

 主要な柱は、①総合診療医が担う地域医療体制、②地域内IHN(機能分化と統合)、③ICT化による地域内個人認証システム、④様々な角度から日常の健康を「マネージ」するエリアを構築し、⑤そのために多様な能力を有する医療人材と総合診療医を育成する新しいタイプの医学部を設置することである。
 この構想試案を医師不足・偏在の問題とも関連させつつ、議論のたたき台として提示したい。

 日本が世界の課題解決センターとして先駆的なモデルを提示する国へと飛躍するよう、活発な議論を期待するものである。

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松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。

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