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新たな財政財源はあるのか~2015年政策科学学会大会報告~

新たな財政財源はあるのか~2015年政策科学学会大会報告~

 2015年9月19日に開催された政策科学学会の大会で、松田まなぶは、「財政財源案の比較検討」と題して、概ね次のような内容の研究報告をいたしました。(6ページの説明資料と、パワーポイントをプロジェクターで映し出しての報告でした。)ここでは、そこで何を論じたかの項目だけ、ご紹介いたします。

Ⅰ.前提としての基本認識
 まず、日本の財政が持続可能になる、つまり、政府長期債務残高/GDP比の上昇が止まり、一定水準に収れんするようになるためには、今後、10年間で50~60兆円のオーダーでの国民負担の増加が必要だという日本財政の「不都合な真実」があります。

 すなわち、①2017年4月に消費税率を2%アップ[5兆円]し、②アベノミクスが成功して名目で3%半ばの経済成長率が実現しても必要な財政再建努力を行うことで2020年度にプライマリーバランスを達成する[6.2兆円]という政府目標が実現し、③その後、名目3%の経済成長のもとで、数年間で消費税率換算で15%相当の財政再建努力が必要[46兆円]という計算になっています。

 この[ ]内の数字を全部合わせると、増税か、社会保障給付などの歳出削減で、50~60兆円という数字になり、それが日本経済への負荷となりますから、上記の財政再建の前提である経済成長も実現が危うくなります。何らかの国民所得の増大を、この規模で生じさせなければ、財政再建も経済成長も実現しないということになってしまいます。

 そこで、今回の報告では、こうした国民所得の増大、つまり、日本経済の規模拡大を50~60兆円の規模で財政面から生じさせるために必要な新規財源として、どのようなものが考えられるか、これまで松田まなぶが提案してきた構想を中心に、他の学者からの提案も加えてリスト化し、今後の議論の素材とすることといたしました。



Ⅱ.財政財源案

1.政府の通貨発行権の活用

(1)政府紙幣の発行+政府による資産(金)購入
 …政府が金を購入し、その数倍の金額で高額面の政府紙幣を新たに発行、政府紙幣は転々流通し、その一部は日銀に持ち込まれますが、日銀は持ち込まれた政府紙幣の金との兌換を政府に請求する権利を持つ、という構想で、以前、松田まなぶが論文にまとめたことがあります。
(2)国家緊急事態における政府の通貨発行権の発動

【第三の財政財源…日銀政府口座】…デフレ克服と所得倍増へのマクロ経済政策大転換
…(丹羽春樹大阪学院大学名誉教授)政府の通貨発行権を「無体財産」として一定額を日銀に売却⇒日銀は資産としてバランスシートに計上⇒同額の通貨を日銀にある政府口座に振込み⇒政府は、将来の財政負担(負債)にならない財政財源を自在に確保。
・デフレ対策や経済政策としての位置づけ?→打ち出の小槌…民間経済からも規律を奪う
・国家緊急事態に限った「超法規的措置」
・むしろ、国家緊急事態:赤字国債(それ自体が財政規律違反)の償還に充当。

【緊急の救民対策としての政府紙幣発行】激甚災害を原因とする国家非常事態
・2万円札、5万円札→被災者に政府が一律に配布 当面の生活の安定
・被災者一人当たり月10万円を一年間配布→数千億円
・欧州にも200ユーロ札、500ユーロ札。旧西ドイツには1,000マルク札
・日本国を象徴する図柄に「日本政府」…国家は自分たちを見捨てていないという安心感
・例:大蔵省資金運用部 激甚災害に限定して金利減免措置に例外的に応じていた

2.無利子非課税国債、超長期国債など国債の多様化
(1)超長期国債…現在はどの国債も60年償還ルール→100年償還国債など
(2)無利子非課税国債…相続税非課税
・国の財政を好転させず…金利負担額<相続税収減少
・海外資産や税金逃れのアングラマネーの吸収(資金の出所を問わない)…
・不正蓄財も国のために有効活用に これも「資産ストック・フロー化戦略」

3.永久国債(無期限公債)
 英国のコンソル公債(consols):18世紀初めナポレオン戦争 金利だけを支払う国債 当初の利子率3.5% ロンドン金融市場で取引 慰める(console) 購入者には株式のような感覚あるいは一種の年金がもらえるという意識…デット⇒エクィティー型へ

(1)国債資金繰り説に立つ永久借換債…60年償還ルールに代わる財政規律が前提
・税収等+新規建設公債発行額>実質財政需要+建設公債の定率繰入+国債利払い費…(*)
赤字国債新規発行=赤字国債の元本償還…(**)⇒一般会計からオフバランス⇒この部分を永久国債に借り換えていく。

(2)個別価値に着目した無期限資金調達…株式に近い
・政府部門が永続的に保有し続ける資産価値を裏付けとした永久国債

(3)永久年金国債…金利=年金支給

(4)永久出資公債…政府の投資活動に対するステークホルダー
・企業は多様な人々をステークホルダーとする存在…政府にはフロー面でのステークホルダー(納税者)⇔ストック面でのステークホルダー(エクイティ投資者)はいない。
・政府は現に投資(出資)活動をしている…政府の出資財源として:バランスシート上のつじつまが合う:両方とも「無期限」あるいは「永久」

(5)パブリックエクイティ…公的価値形成への参加とその持分保有
・証券形態でドネーションを募る 事実上の出資 証券形態なら換金できる 富裕層でなくても寄付ができる 出資と寄付を結びつける 「ドネーション・ボンド」
・おカネを病院に寄託することで安心と病院の提供する恩典を享受 ゴルフ場会員権 
⇒多様な地域再生構想に応用 自治体が株主を募り株主優待を行う

(6)成長成果配当型無期限国債…新たな「日本株式会社論」
・一種の株式に近い性格のものを政府が発行 満期の定めのない一種の半永久債
・本国債保有者は、毎年、その年の名目経済成長率と同じ率の金利で国から配当
・すつて、松田まなぶが「たちあがれ日本」のマニフェストに盛り込んだ構想。





4.日銀による国債直接引受
「日銀による国債の直接引受は禁じ手」とのタブーを破り、オモテから認める。日銀も国債発行市場で入札に参加する。

5.SWF:日本型ソブリンウェルスファンド(外為特会)
・外国為替特別会計で保有する米国債は、円建ての財務省証券(FB)で地用達された資金でドル買いをする為替介入の結果、積み上がってきたもの。⇒外為特会ではバランスシート上、資産と負債が両建てで膨らんでいるに過ぎない。
・これまで、同特会の積立金を財政財源に活用との提案があったが、それは財政投融資に預託される形で活用されてきた。
・この積立金は、外貨資産と円建てのFB(政府短期証券)との金利差から生じた剰余金が積み上がったもので、近年の改正で、今後は、これを財投預託ではなく、FBの償還に充てることになった。これを、償還に充てずに、財政財源に活用すれば、10~20兆円の規模で財源ができるとの議論がある。

6.赤字国債と建設国債とのツイストオペレーション
・財政健全化とは本来何なのか⇒赤字国債の縮減…新たな財政規律の考え方の構築
・赤字公債(財政法違反)と建設公債(バランスシートの発想)の明確な峻別
・⇔両者とも60年償還ルール…大蔵省の悪知恵?⇒先進国最悪の財政に
・3,300兆円の日本の金融資産…そのポートフォリオの質の改善が本質
・赤字国債新規発行額の縮減>建設国債新規発行額(6兆円…ピーク時の半分)の増額
・赤字国債の発行は減らし、その範囲内で建設国債の発行は増やしても良いと考える。逆方向のオペレーションを組む。

7.日銀基金構想と政府保証債
…「次世代国家基盤構築計画」(仮称)

(a)日銀購入資産が国債に偏っていることが金融市場の混乱と機能不全をもたらし、出口における長期金利上昇リスクをも高めている現状を是正するとともに、銀行を通さずに実体経済に直接、マネーを供給することでマネーサプライ増大に実効をあげるために、日銀に基金を設置して、金融緩和政策に新しい手法を導入する。

(b)日銀は米国FedによるQE1における事例(政府支援企業発行のエージェンシー債を大量購入)にならって、本基金の運用として政府保証債を購入する。

(c)政府は30年後の2045年頃の次世代における日本の将来像を構想し、その構築に向けて国家のみが担い得る超長期の「未来への投資」分野を特定する「次世代国家基盤構築計画」(仮称)を策定する。

(d)政府の計画に基づき指定された各分野において行われる長期投資については、その担い手は法人(主として独立行政法人や政府出資企業などの政府系法人が想定される)とし、その財源は財政(税や国債)に依存せず、投資の実現に政府の関与による財源調達が不可欠と判断される部分について、法人は債券を発行し、これに政府保証を付けることを基本とする。この政府保証債は30年程度の超長期債券を中心に据える。

Ⅲ.財政運営の前提的インフラとしての公会計改革

(1) 公会計改革により、国・地方にわたって従来の現金主義・単式簿記の財政会計制度を発生主義・複式会計へと転換する。すでに国については決算ベースではこれによるバランスシートが策定されているが、予算の計画段階からこの会計方式を財政運営に導入する。具体的には、財政のうち資本的支出については、多年度にわたる将来計画を策定し、毎年度の予算編成に当たっては、政府投資予算をこれに基づいて策定する。これにより、公的部門の資産評価が適正化され、バランスシートに基づく長期的な資産-負債管理が、国民に対して「見える化」された形でなされることになる。

(2) 国の一般会計は、(a)政府投資勘定、(b)経常勘定、(c)社会保障勘定、に3分割する。基本的に、「政府投資勘定」は投資国債を財源とし、「社会保障勘定」は消費税を財源とし、「経常勘定」はその他の税収等を財源とする。

(3) 政府投資勘定の財源としての投資国債については、複式会計の考え方のもとで、政府投資の結果として保有することになる資産の性格を判定しつつ、それに応じてファィナンスの形態を多様化する。

(4) 経常勘定では、赤字国債の縮減に向けて歳出の合理化を徹底する。

(5) 社会保障勘定では、消費税収の不足分である赤字国債への依存度をもって世代間公平を図る目安とすることで、社会保障の受益と負担についての国民選択が行われやすくなる。
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Author:matsuda-manabu
松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。

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