【ニッポン興国論】第20回 経済力倍増5か年計画で消費増税を乗り超える強い経済を。
- 2012/09/30
- 00:39
【第20回】経済力倍増5か年計画で消費増税を乗り超える強い経済を。
前回は、「経済政策と税の一体改革」の手順を述べました。それは、①「経済力倍増5か年計画」で日本経済の成長への道筋を示す、②建設国債発行の倍増で政府投資を倍増させ、おカネを回してデフレ克服へと経済を動かす、③消費増税の実施で赤字国債の発行額が減少する、④名目4%の経済成長経路の実現で財政が健全化に向かう、⑤次の消費増税をもって消費税率引上げがストップできる状態が実現する、という5段階にわたるものです。
前回第19回の記事は、こちら↓をご覧ください。
http://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-11361707927.html
かつて日本は、池田勇人首相の「所得倍増計画」で高度成長の夢を実現し、宮澤喜一首相も「資産倍増」を唱えました。しかし、これに続く「失われた20年」で主流となった「構造改革」は、国民を明日への行動へと駆り立てるストーリー性が薄いものでした。
人は、自らが演じることができると思えるような、なんらかの「物語」があってこそ、リスクをとって未来に向けたチャレンジができるものです。私は、これからの日本の新たなストーリーは「活力ある超高齢化社会の運営モデル」を世界に先駆けて構築する国になることだと考えています。財源は、2,800兆円にものぼる日本の金融資産です。
しかし、デフレで委縮状態にある民間経済がその物語を始められるためには、まずは政府が日本経済のこれからの道筋を示し、民間企業や個人を覆う将来への不確実性を軽減することが欠かせません。
こうしたビジョンとして今の日本に求められているのが、「国力倍増計画」だと思います。日本が自らの潜在的なパワー活かしきれず、国力の全般的な衰退が起こっているのが、こんにちの日本の姿だからです。
外交で近隣諸国からなめられるのも、それが背景にあります。所得や資産だけでなく、基本的な経済成長力、国防力や外交力、地域力、人材力や文化発信力まで、万般にわたって「日本力」を倍増させる政治的リーダーシップが必要です。
その大きなビジョンのパーツとして、前回の5段階にわたる「経済政策と税の一体改革」の最初の5年間に位置づけられるのが、「経済力倍増5か年計画」です。
まず第一に、14年度からの消費税率引上げまでの当面の2年度にわたる期間を、デフレ克服に政策を総動員して、東日本大震災の被災他復興と防災安全国家の建設などを柱に、政府投資による総需要対策を講じ、名目経済成長率を引き上げる期間とします。
こうしておカネの回転を強化した上で、第二に、その後の、消費税率の段階的引上げがなされる期間を含む3年間を、日本経済の生産性の向上に向けた構造政策の期間とし、新しい分野や市場の創出などの取り組みを強化して、消費税率引上げに十分に耐えられるだけの民需主導の「強い経済」を実現します。
12~13年度は、最終需要の大規模な発掘を行い、名目成長率を倍増する時期となりますが、他方で、この2年で競争力向上の構造政策を仕込みます。それが成果を上げ、民間需要中心の成長過程に入るのが14年度からの3年間です。これが消費税率引上げ期間と重なることになります。
14年度~16年度は、経済成長力強化期間ということになります。2年度にわたるデフレ克服期間で点火した総需要が、民間資産ストックをフローとしてのマネーへと引き出し、民間主導の力強い経済循環につながる時期です。
これを日本の成長力強化へと結実させるよう、生産性上昇への構造政策を講じます。ただし、生産性上昇はコスト削減(小泉改革)ではなく、バリューの創造(真の構造改革とは「組み立てる改革」)でなければなりません。
この期間には、消費税率引上げの影響を飲み込むだけの生産性上昇運動を展開することも考えられます。業界ごとに労使一丸となって生産性上昇率の引上げ目標を設定し、2010年代後半の毎年度の生産性上昇率が標準ケースに比べて1%ポイントずつ高いものとなることをめざします。
結果として、15年度までの消費税率5%アップ分を上回る生産性上昇効果を実現させます。このことを謳うことで、消費税率の引上げが日本の民間経済にとっての負担増にはならないことをイメージできるようにします。
日本がTPP交渉に参加し、13年中に妥結されると仮定すれば、13年度にかけてはTPP交渉の時期になります。これを機に、各界、各業界、各産業経済分野ごとに、「日本の国益は何か」を見極め、それを実現する国家戦略を官民の力を結集して策定してはどうでしょうか。TPP交渉はこの戦略に基づいてなされ、政治は合意形成の役割を担います。
こうして国際スタンダード形成に日本の国益を反映し、その成果を成長につなげる時期として14年度からの3年間を位置づけます。
大事なのは、これらの政策を採る過程で実現する日本経済の次の成長の姿です。それは、金融資産を始めとして、日本に蓄積された潜在的なパワーのストックが、強力な経済循環のフローに結実する状態を実現することです。
次回は、それを促すより長期的な計画として「未来創造力倍増計画」を論じてみます。
(第18回以前の掲載分も、このブログでぜひ、ご覧ください)
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