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【ニッポン興国論】第18回 政府と民間建設投資の2つの起爆剤で経済成長に点火する。

18回】政府と民間建設投資の2つの起爆剤で経済成長に点火する。

 前回は、5%の消費税率引き上げで社会保障の財源が確保される結果、国の赤字国債の発行額が減少し、その減少分だけ建設国債を増発すれば、政府投資は倍増し、財政を悪化させることなく10年で300兆円の政府インフラ投資が可能になることを提案しました。これは、日本の2,800兆円の金融資産の内容を、将来世代の富を先食いしてしまう赤字国債から、未来への意味ある投資(建設国債による国民資産の形成)へと改善することにもなります。

前回第17回の記事は、こちら↓をご覧ください。

http://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-11349348901.html

さて、消費増税はデフレを加速すると言われます。増税の効果だけをみるならば、少なくとも短期的には、それが景気にとってマイナスではないと主張するのは苦しいでしょう。

しかし、大学などで財政学や経済学を学ばれた方はご承知かもしれませんが、政府が増税し、それと同じ額だけ政府支出を増やすのであれば、その場合の乗数は1です。つまり、増税した額=支出を増やした額だけ、経済にプラスの影響を与えます。


前回第17回でみたように、「社会保障と税の一体改革」では、消費税率引き上げ分の一部しか社会保障支出の増加には回りません。5%で13兆円あまり増税しても、社会保障支出が13兆円新たに増えるわけではないため、それだけでは景気にマイナスです。

しかし、13兆円の消費税増税のうち、一定部分は国と地方の社会保障費の増大に回りますが、残りのうち、国の赤字国債の減少に回った分だけ国が建設国債を増やして、国と地方が政府投資向けの予算支出を増やすことで、全体で13兆円、政府支出が増えるならば、乗数は1になります。結果として、景気に対し、その金額分のプラスの経済効果が出ます。

つまり、GDPは13兆円あまり増えることになります。これはかなり大きな景気刺激効果です。このような経済政策のもとであれば、消費増税はむしろ景気にはプラスになるということになります。

 

 財政規律(緊縮財政)か、景気重視(積極財政)か、という単純な「不幸な二項対立論」から早く脱却すべきです。そこには、財政規律と景気を両立させる「第三の道」があります。

「ポリシーミックス」という言葉があります。これは、複数の政策目的に対し、それに対応する複数の政策手段を組み合わせることです。

さらに、金融政策には「オペレーション・ツイスト」という言葉があります。

これは、例えば、中央銀行が長期証券は買い操作、短期証券は売り操作を同時に行い、通貨の供給量は変えずに、同じ金利でも、長期金利と短期金利を逆方向に動かす操作のことです。米国では、長期金利の低下で投資を刺激する一方で、短期金利を高めに維持して資本流出を抑制するために、この方式が採られていた時期があります。

財政政策も、こうした逆方向の組み合わせを考えるべきです。


社会保障や政府の経常的な支出に関する財政運営では、財政規律を重視して増税し(赤字国債を減少)、将来に向けて資産を形成する政府投資については、景気を重視して積極財政を打つ(建設国債を増発)。こうした「オペレーション・ツイスト」によるポリシーミックスを狙ってはどうかというのが、私の提案です。

民間がおカネを支出しようとしないデフレのもとで、まずは、こうした政策で政府がおカネを回すことで、経済全体のマネー循環の起爆剤にする。


そして、実は、政府投資の次の順番で、もっと大きな目玉が出てきます。それは、住宅投資などの民間建設投資です。

日本には今、新しい耐震基準ができた1981年以前に建てられた住宅だけでも、1,500万戸~2,000万戸もの家が存在しています。これら住宅は建築後、30年以上の長い年月が経っていますから、その更新、建替えへの潜在需要が相当あるとされます。しかし、近年の経済の先行き不安の中で、なかなか更新需要が顕在化してこないという状況です。

防災安全国家のもとに、この際、耐震構造、免震構造への建替えについて政府が支援策を講じてみてはどうでしょうか。

強固な耐震構造や、振動が吸収される免震構造へと、住宅を建て替える場合には、政府が消費税を免除したり、金利負担に補助したり、贈与税の非課税枠を拡大するなどの措置を講じるわけです。

消費税率の引上げで住宅建設の負担が大きな問題になっている中で、こうした助成には相当な効果があるでしょう。


住宅に民間のビルも加えれば、建替え需要の顕在化だけで、GDPベースで10年で600兆円近くもの巨額な民間建設投資が起こるという推計もあります。

これは何もないところに新たな建物を建設するものではありません。既存の建物についていずれ必ず来るのが建替えですが、その後ろ倒しになっている需要を前倒しで発現させるだけのことです。しかも、政府投資とは異なり、政府のおカネではなく、民間資金を使うものですから、財政負担の問題もありません。


東日本大震災を経た日本は、防災・安全というテーマだけで、政府にも民間にも広大なる投資フロンティアが広がったといえます。これをマネー回転の起爆剤に活用しない手はありません。


次回は、「経済政策と税の一体改革」の政策手順、道筋を整理してみたいと思います。

(第16回以前の掲載分も、このブログでぜひ、ご覧ください)
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松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。

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