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【ニッポン興国論】第17回 財政を悪化させずに、10年で300兆円の政府投資をする。

【第17回】財政を悪化させずに、10年で300兆円の政府投資をする。

 前回は、日本が持つ2,800兆円もの金融資産について、その資産運用の中身を、日本人自らの豊かさに結びつける運用対象へと改善させ、経済全体のマネー循環を強める方策として、政府投資の拡大を提言しました。社会保障の財源である消費税の増税で、将来の富を先食いする赤字国債を減らし、その分、将来世代に資産を残すための借金である建設国債を増やす形で、日本の金融資産の中身を改善するということです。

 前回第16回の記事は、こちら↓をご覧ください。

http://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-11344578727.html

今回は、この政府投資のあるべき規模について、財政とも関連づけながら論じてみます。


国政選挙に向けて、公明党が100兆円の防災インフラを、自民党が10年で200兆円の公共投資を打ち出す中で、たちあがれ日本は「10年で300兆円のインフラ投資」を提唱していますが、これを提案した私は、決して数字の大きさを競おうとしたわけではありません。

いまの日本のインフラ投資は、本来あるべき水準からみて不自然に低くなっています。これがデフレを加速してきたことも間違いありません。それを、今後の国家の必要性からみても、健全なあるべき水準にもっていくだけで、現在の2倍の投資水準にはなると考えたわけです。それは、日本が90年代にすでに経験していた水準にすぎません。


国民経済計算ベース、つまりGDPベースで、日本の政府建設投資は、90年代の年平均額が33兆円程度でした。それが現在では、1617兆円まで、ちょうど半減しています。政府建設投資の国の財源は建設国債ですが、90年代は年平均額で建設国債を約12兆円発行していました。2012年度の国の一般会計予算では、建設国債の発行額は約6兆円ですから、これもちょうど半分に減っていることになります。

国力倍増のために、この建設国債の発行額を6兆円から12兆円に倍増することで、政府投資額を1617兆円から33兆円程度に倍増し、その水準を10年間続ければ、300兆円を上回る金額の政府インフラ投資になります。これは、日本が90年代に経験していた水準と同じであり、荒唐無稽なことを言っているわけではありません。


もちろん、90年代の公共投資については、消化が困難だった、自治体の債務を膨らませた、等々の批判があることは十分承知しています。私も当時は、なんでもありのバラ撒き的な「公共事業」を批判していました。

しかし、それは真に必要な社会的ニーズを上回る事業を押し付けたからで、この【ニッポン興国論】の第6回や前回の第16回でも触れたように、これだけ新たなテーマが百出している現在は違います。事業に必要な資材やヒトが足りないと、早速、東北被災地でも悲鳴が上がっていますが、それは国をあげてシステマティックに解決すべき問題です。

政府部門の債務の問題も、その後、PFI(Private Finance Initiative)やPPP(官民連携パートナーシップ)など、民間資金を導入する手法が進んでいますし、政府のファイナンスそのものも、さまざまな形態へ「進化」させることが可能だと考えます。


いずれにしても、今回、「社会保障と税の一体改革」で消費税率5%アップが決まったことが、建設国債の増発による政府投資の拡大が可能な環境を生んでいます。

現状では社会保障の財源が税制面で3分の2も不足している状態を、3分の1の不足にまで縮小させるのが、予定されている5%の消費税率アップの効果です。この5%アップ分が何に使われるかですが、次のように考えると理解しやすいと思います。


まず、1%分が、社会保障をこれまでよりも充実させることに使われます。

医療と介護の効率化で1.2兆円の節約をしますが、他方で医療と介護の機能の改善と強化、少子化対策と年金の充実に向けて3.8兆円の増額をするため、差し引きで2.8兆円の社会保障費の増額が消費税率1%アップ分に相当します。

残りの4%分ですが、これは社会保障を安定させること、つまり、現行の社会保障を守ることに使われます。

その内訳は、1%強分が、いまの年金の国庫負担の財源措置になります。年金財政が極めて苦しい基礎年金に対して、国が負担する割合(国庫負担率)を09年度から、36.5%から50%へと引き上げましたが、その引上げ分に相当する恒久的な財源が手当てされていませんでした。そこに回る分が1%アップ分です。

あとは、社会の高齢化による自然増分に対応する1%アップ分もありますが、これも含めて、今のままでは後世代へのツケ回しになる分を減らすことに、ほとんどが充てられるといっていいでしょう。つまり、5%上げるといっても、うち4%近くは、ツケ回しを減らすことに充てられるといえます。


これは、国の毎年度の赤字国債発行額を、今よりも56兆円程度減らすことになると見込まれます。ならば、毎年度の建設国債を6兆円増発しても、全体の国債発行額は同じです。現状よりも財政を悪化させることなく、政府投資倍増が可能だということになります。


次回は、こうした財政政策のもとで実現する経済成長の道筋について論じてみたいと思います。

(第15回以前の掲載分も、このブログでぜひ、ご覧ください)
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Author:matsuda-manabu
松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。

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