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1. 無題
2. Re:無題
その通りです。戦略的投資国家になれるかと゛うかがポイントだと思います。そうなれないから政府投資をしないという敗北主義では、日本の将来は開かれません。
松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について 総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。
【第16回】政府投資でマネーの行き場を創り、金融資産を生き返らせる。
前回は、日本が2,800兆円もの金融資産を有するといっても、その運用の中身をみると「凍結状態」にあること、その「解凍」でおカネを有効に回す前提は、実は消費増税であり、それがデフレ脱却のカギを握ることを述べました。
前回第15回の記事は、こちら↓をご覧ください。
http://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-11338272931.html
今回から、せっかくの日本の巨額の金融資産について、その運用の中身を、私たち自身の豊かさの実現に向けて進化させる道を考えてみたいと思います。
ここで問われているのは、金融資産のポートフォリオ(資産選択)の質です。問題は、日本の場合、そのかなりの部分を、赤字国債やその借換債という、国民経済に富を生むどころか、いわば将来の富を食い物にしているような運用の仕方が占めていることにあります。
金融とは、資金が余っている主体から資金が不足している主体へと、マネーを融通することです。これを一国全体でみると、通常、家計部門の余剰資金(貯蓄)を、資金不足部門である企業部門が吸収し、企業が設備投資など経済の生産性を高める使途へと、その資金を投資することで、健全な経済成長の姿が実現します。
しかし、日本では、家計だけでなく、企業も資金余剰部門になっています。バブル崩壊に懲りて、あるいは、不良債権処理の中で、企業は守りの姿勢に走り、資金を借り入れて新たな設備投資をするよりも、余剰資金を金融機関に運用したり、借金の返済(貯蓄にカウントされる)に回すことを優先する傾向が続いてきました。
その代わり、政府部門が大幅な資金不足になっています。民間の余剰資金を政府が国債の形で吸収することで、一国経済全体がバランスするという姿になっています。
この状態のまま、もし、政府が資金不足を減らせば、国内で貯蓄は過剰となり、経済はさらに不況になります。そして、海外へと資金があふれ出ていく形で、一国全体の貯蓄と投資のマクロバランスが図られることになります。海外への資金の純流出は経常収支の黒字と一致しますから、日本は黒字の増大で不況を海外に輸出する国になってしまいます。
つまり、日本の民間貯蓄の向かう先として、膨大な国債発行残高と、世界ダントツ一位の対外純資産がある、それによってバランスしているのが日本経済のマクロの姿です。この中で、財政の帳尻を合せるだけでは、マクロ経済はうまく回っていきません。
本来、望ましいのは、家計や企業が消費や投資を活発に行うことで、おカネが民間部門の中で力強く回り、生産的な分野への投資が増えることです。これにより、一国全体の金融資産残高の内訳は、将来の富を増やすための資金運用で占められる姿になります。
しかし、将来への不確実性が高く、民間がリスクをとろうとしない今のようなデフレ経済のもとでは、民間はおカネを借りて投資を増やすことには消極的です。上記のような理想的なおカネの回転が民間主導で実現しないところに、いまの日本経済の問題があります。
やはり、政府が突破口を開くしかありませんが、ここで大事なのが、政府部門の資金不足の内容なのです。同じ国債でも、将来にツケだけを残す赤字国債は消費増税で減らし、その分、将来に意味ある資産を残す政府投資の財源としての建設国債を増やす。
単に赤字国債を減らすだけでは経済全体のマクロバランスは前述のように崩れてしまいますが、これであれば、経済も財政状態も悪化させることなく、政府は、マネーの流れを意味ある資産形成へとスイッチする操作を行ったことになります。
政府が投資をするといえば、誰もが思い浮かべるのが「公共事業」という言葉ですが、この、利権やムダというイメージと一体になってしまった言葉を使うのはもうやめましょう。ここで提案する政府投資とは、日本にとって絶対に必要な投資を政府主導で進めようということです。むしろ「インフラ投資」と言ったほうがよいと思います。
実は、日本は、これから国民の生命や財産を守っていくための、そして、健全な経済として発展していくための基盤が、崩壊状態にあります。それは、この【ニッポン興国論】の第6回でも述べたとおりです。
震災復興、防災安全国家の建設、老朽化したインフラの更新だけではありません。例えば、全国的な交通ネットワークの強化も、日本は一つ、インフラで「ワン・ジャパン」をめざし、助け合いで日本がつながる「連帯と安心のネットワーク」という意味が出てきました。
グローバル化や道州制などにふさわしいインフラ基盤の再構築も、日本経済の今後の成長のためには必要です。
社会的に意味ある実需に応える政府投資は、民間経済活動の基盤として生産性の高い資産形成になります。
まずは、政府部門のファイナンスの内容を赤字ファイナンスから投資ファイナンスへと変換することで、日本の金融資産の中身を改善し、日本経済のおカネの循環の起爆剤にする。
ここから凍結金融資産の「解凍」が始まります。
では、望ましい政府投資の水準はどの程度なのか。次回は、これを財政と関係づけながら論じてみたいと思います。
(第14回以前の掲載分も、このブログでぜひ、ご覧ください)