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松田まなぶの論点 原子力協定をめぐって、脱原発の意味

 この臨時国会で日本維新の会の国会議員団が特に真っ二つに割れたのは、トルコやUAEとの原子力協定への賛否をめぐってでした。この批准自体は次期通常国会に先送りされましたが、メディア的にいえば、原発に肯定的な旧太陽の党の重鎮たちが主導して賛成で党をまとめようとしていることに、脱原発の立場に立つ大阪維新系の議員たちが反発して、両院議員総会が開催され、多数決の投票が行われることになったという説明になります。
 確かにこの議論は相当荒れました。反対派の主張には、小泉元総理が強烈に脱原発で世論を動かしている中で、維新が賛成に回るようでは支持率はますます低下するといった政局論が見受けられました。また、これだけの原発事故を起こした国として、原発を他国に売り込む資格はなく、それでは国柄を問われるし、「2030年代にフェードアウト」との党是にも反するとの基本スタンス論もありました。確かに経済面、外交面の論点は重要だが、脱原発はそれとは次元の異なる国家の基本路線の問題だという立場です。

 私自身は後述の国家公務員法案をめぐる内閣委員会の理事間協議と重なり、この両院議員総会にほとんど出席できず、自らの考えを申し上げるタイミングを失してしまったのですが、いったん採決は延期され、その間に、石原慎太郎、橋下徹の両共同代表の意見の相違について確認をすることになり、橋下代表からは全議員に対して、メールが届きました。そのメールが効いたのか、採決では、僅差で反対が賛成を上回り、日本維新の会としては原子力協定には反対するとの結論になりました。
 橋下代表のメールは、使用済み核燃料の最終処分場なきままの原発稼働は、トイレのないマンションのようなもので、例えばトルコがトイレを作ることを約束しない限り、日本として原発への協力をすべきではないという内容でした。



 私の考えを以下、簡単にまとめます。

 私は、福島原発の大事故を起こした国として、日本は重大な責務を国際社会に対して負ってしまったと考えています。それは、人類を原発の脅威から守るために、日本はエネルギー面で、できるだけ多くの国際貢献をしなければならない国になったという意味です。世界に冠たる原発技術を持つ日本がそこから逃げているようでは、かえって無責任であり、国柄を疑われかねないというのが私の意見です。
 そのために、第一にやるべきことは、日本自らが新しいエネルギー体系を世界に先駆けて構築し、原発に依存しない社会を実現することです。海洋や森林など自然資源に恵まれた日本なら、十分に挑戦できる課題だと考えます。「フェードアウト」はその結果として起こるものと考えるべきです。
 第二に、それまでの間は、そして、世界各国が原発依存から脱却するまでの間は、人類社会が原発との共存を続けることを回避することはできないのですから、その間の次善の道として、日本はその安全性の向上に全力を挙げて取り組むべきです。日本がいくら脱原発を唱えても、新興国や発展途上国が豊かさを実現するために原発を建設していく流れにストップをかけることはできません。このことは、日本が変えることのできない「与件」です。与件を前提として、そのもとで日本が採ることができる現実的な選択肢にこそ、意味ある「ソリューション・スペース」があります。
 第三に、そのもとで今回の原子力協定について考えれば、もし、日本がトルコからの原発受注を取りやめたとしたら、何が起こるでしょうか。それでトルコが原発建設をやめるわけではありません。恐らく、中国や韓国が日本に代わって受注するでしょう。それを経済的な意味で日本にとってマイナスと考えるのではなく、例えば中国が受注すれば、トルコが原発事故を起こす確率は日本が受注する場合よりも高くなると考えるべきです。
 トルコが「トイレ」を作るかどうかも、日本にとっては動かせない事柄です。中国が受注すればトルコがトイレを作るわけでもありません。むしろ、日本が受注したほうが、トルコにトイレづくりを働きかける立場を日本は得ることにもなります。

 プラグマティックに考えれば、日本が受注してトルコとの原発協力を進めたほうが、そうでない場合に比べて、原発事故のリスクは軽減され、世界の原発の安全に寄与することになるはずです。世界的に高い技術水準に加え、日本はマネージメントの問題から福島原発事故という失敗経験までしました。一度失敗した者は、そこから得られる教訓を得ることで、二度と同じ失敗はしないものです。
 ましてや、日本は人類共通の課題に最初に直面する国、「課題先進国」になっています。原発の安全性も、福島原発事故によって、そのアジェンダに入ってきました。世界の課題解決に全力で貢献する姿こそ、これからの日本の国柄だと思います。
 もちろん、私も日本維新の会の議員として、党内多数決で決まったことには従います。しかし、原子力協定に関しては、このような考え方もあることは、確認しておきたいと思います。
 なお、12月17日に維新の国会議員有志で視察に訪れた青森県の六ヶ所村にある日本原燃の原子力燃料サイクルを実際に見て、私は上記の思いを強めました。原発を論じる上で、知っているか知らないかで大きな違いがある日本の技術の実態、感情論や観念論では捉えられない「現実」がそこにはありました。


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松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。

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