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松田まなぶ 日本原燃の核燃料リサイクルを維新の議員で視察

 脱原発をめぐり、特に小泉元総理の原発ゼロ発言で、議論は収束どころか拡大、混乱すらしてきていますが、どうも、多くの議論に不足していると感じられるのが、現在の日本の原子力技術の実態についての正確な認識のようです。日本維新の会も原子力協定の批准をめぐって賛否が真っ二つに割れたところですが、これは感情論や観念論で判断できる問題ではなく、もう少しリアリティーのある議論が必要です。


 私がその思いを強めたのが、12月17日に日本維新の会の国会議員団有志が行った、青森県六ケ所村にある日本原燃の核燃料リサイクル施設の視察でした。現場を重視する維新として、とにかく現実をみてみようということになった次第です。もしかすると、原子力協定に反対した議員の中にも、この視察で考え方を修正した議員がいたかもしれません。
 使用済み核燃料の最終処分が確立していない現状についても、「トイレのないマンション」とされていますが、現実は、それをもって原発稼働に反対する理由となるとは言い切れない面もあるようです。





 技術的な解説は専門家に委ねるとして、今回の視察を踏まえた私なりの認識を分かりやすく簡略に説明すると、日本の原子力利用は、①通常の原子力発電、②日本原燃が行う使用済み核燃料のリサイクル計画、③そこからプルトニウムなどを活用して増殖させる「もんじゅ」の計画、という三層構造になっているように思われます。
 ここに絡む要素の一つは、このリサイクルが日本の資源確保と環境保全の両面に寄与するということです。処理の過程で、放射能のレベルを低下させた形での最終処分が可能になります。
 このうち、まず資源確保の論点については、エネルギー自給率が4%に過ぎない日本では、原子力の燃料であるウランも輸入していますが、原発の運転で使い終わった使用済燃料を再処理することで、ウランやプルトニウムを回収し、それを軽水炉で再利用することができます。それを「プルサーマル計画」と称しており、日本原燃ではすでに、日本の各原発施設から出た使用済み燃料(その一部は英国やフランスに委託して処理されたもの)を中間貯蔵しており、それをMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物)に加工して軽水炉の原発の燃料として供給する施設を建設中です。軽水炉による再利用で2割強のウラン資源の節約になるということです。すでに日本国内の多くの原発施設でプルサーマルが計画されています。


「これは日本原燃の施設ではなく、近くの風力発電」

 次に処分という点についてですが、地下400mに核物質を埋める最終処分方式で世界的に注目されているのがフィンランドのオルキルオトですが、それは「直接処分」方式と呼ばれるもので、放射性のレベルが極めて高い段階でなされるものです。使用済燃料を再処理せずに、直接処分した場合、貴重なエネルギー資源のウランやプルトニウムなどをそのまま捨ててしまうだけでなく、天然ウランのレベルまで放射能の毒性が低下するのに要する時間は軽水炉燃料サイクルの1万年に対して約10万年と、さらに長い期間になります。



 日本が取り組んでいるリサイクルでは、高レベル放射性物質の廃棄物をガラス固化体とすることで、使用済燃料を直接処分する場合に比べて体積が1/3から1/4に低減できますから、処分場の面積も約半分から2/3に低減することができます。このガラス固化体は私も現地で見ましたが、放射能や放射線が漏れる可能性がない完全封印方式となっています。
 日本原燃では、全国の各原発施設から出る「核のゴミ」をこの形で中間貯蔵する場所が、40年分、確保されています。ガラス固化体の形での貯蔵期間は技術的に30~50年が適正とされており、地下300m以深の地中への「最終処分」は、その後になされるものです。ですから、「トイレ」の問題は、最長で40年後までに解決しておけばよいわけです。



 上記のリサイクルのメリットをさらに高めるのが高速増殖炉サイクルです。これは、核燃料を消費した以上に生産(増殖)できる原発技術で、エネルギー問題の解決だけでなく、この過程で放射性廃棄物が低減しますので、「トイレ」の問題解決にも寄与します。日本が高速増殖炉について有する技術は世界のトップクラスだということです。
 もう一つの要素は、国際社会の中での日本の位置づけです。使用済み燃料の処理で発生するのが、核兵器に転用可能なプルトニウムです。核リサイクルは、それを原発の燃料として再利用することになります。この六ヶ所村の施設にはIAEA(国際原子力機関)から派遣された専門家が24時間体制で核兵器への転用がなされ得ない形での処理を監視しています。
 核兵器やプルトニウムなどの核物質の世界への拡散を禁止した条約が、核兵器不拡散条約(NPT)です。核兵器を持たない日本は、その批准国として、利用目的のないプルトニウム、すなわち余剰プルトニウムを持たないとの原則を明確に示す必要があります。それだけでなく、こうしたリサイクルを営むことで、原子力の平和利用で世界を先導する国としての期待と信頼を国際社会の中で集めることも、平和国家ニッポンの道行きとして考えられるかもしれません。



 新規の原発建設の動きは世界的に続いており、これにストップをかけることは現実的に不可能です。使用済燃料の処分、再処理や再処理後のプルトニウムの利用・処分などをどのように行うかは、ますます重大な世界的課題になっていきます。これは、日本が今後、自国の原発依存度をどうするかにかかわらず、向き合わなければならない課題です。日本は、唯一の核被爆国として、また、核兵器非保有国の中で唯一、核燃料サイクルを進めてきた国として、核燃料サイクルを通じて国際的に貢献する役割がないか冷静な議論をすることが、「世界の課題先進国」としての日本に問われているように感じます。

 いずれにしても、この六ヶ所村にある日本原燃の施設がすべて完成した際には、次のサイクルが確立することになります。
 各原発施設から出た使用済み燃料→中間貯蔵施設→再処理工場→(回収ウラン・プルトニウム)→MOX燃料工場→(MOX燃料)→原子力発電所
 また、再処理工場→(回収ウラン)→ウラン濃縮工場→再転換工場→(劣化ウラン)→MOX燃料工場…の流れもあります。


 加えて日本原燃の敷地内には、ガラス固化体にした高レベル放射性廃棄物の貯蔵管理センター、低レベル放射性廃棄物については堅固な地盤の中で時とともに放射能が減衰するまで管理する「低レベル放射性廃棄物埋設センター」があります。

 視察では、私たち一行は、これらのメカニズムの説明を受けながら、施設の状況を確認し、地下深くの埋設場の掘削工事の現場も含めて訪れることができました。
 もちろん、「脱原発」問題については、もっと様々な観点からの議論が必要です。ただ、実際に、この「現場」を自分の目で把握すれば、私が感じたことと同様の感想を持つ人が多いのではないかと思います。確かに、フクシマは多くの人々に原発に対する大きな不信を抱かせることになりましたが、日本の技術の実態は、いたずらに「脅威」だけを強調する前に考えさせられることが多いことを示唆しています。より科学的観点から、日本の国家としての「国柄」のあり方を考えてみる必要がありそうです。



 ちなみに、脱原発をめぐる論点については、「松田まなぶの論点 原子力協定をめぐって、脱原発の意味」に、一つの考え方をまとめてあります。
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松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。

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