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松田まなぶの論点 間違いだらけの消費増税反対論④

<その4> デフレ克服と消費税

 以上、3回にわたって、日本維新の会の立場から消費増税について論じてきました。
 残る論点は、消費増税は必要だとはわかっていても、問題は、予定通りの消費増税が、せっかくのデフレ克服に水を差すのではないか、増税の緩和(例えば毎年1%ずつの引上げ)か延期が必要ではないか、という点だろうと思います。
 消費増税と経済との関係は、別の機会にじっくりと論じますが、ここでは簡単に、以下の点だけ指摘しておきます。
 まず、そもそも、デフレ克服や経済成長との関係で、消費増税をあまり重大視しないほうが良いと思います。消費増税で滅びた国はありませんし、崩壊した経済もありません。もし、それで経済がダメになるなら、付加価値税率が20%前後の欧州経済はとうの昔に崩壊しています。
 「日本は長年のデフレを克服しようとしている時だ、それに水を差す」と考えるのは、かなり間違っていると思います。消費税のデフレ効果というのは、きわめて短期です。
 日本の場合、97年の消費税率2%引上げのすぐあとに、長年にわたる深刻なデフレが始まることになったことが、議論を混乱させているようです。多くの人々が、そして経済の専門家すらが、デフレの原因としてこの時の消費増税を挙げていますが、まず、これが大誤解であることをはっきりさせなければ、正しい議論はできません。
 私は先の通常国会の財務金融委員会における麻生財務大臣への質問の中で、このことを明確に主張し、この点は大臣も認めましたが、その際に委員会に提出した資料が[図2]です。
$松田まなぶ(松田学)のブログ
[図2]

 この図をよくみてください。消費税の経済への影響をみる指標としては、GDPから外需や政府支出を除いた実質国内民間需要(個人消費+住宅投資+設備投資等)の季節調整済前期比がふさわしいといえます。それは、97年1-3月期の+1.0%増から、消費税率引上げ後の4-6月期は▲2.1%減へと、大幅に落ち込みましたが、次の7-9月期には+0.7%増へと回復しています。これは年率換算では3%程度の伸びですから、実質国内民間需要はこの時点で巡航速度の成長をもう取り戻していることがわかります。それがマイナスに転じるのは、次の10-12月期からです。
 ここからも分かるのは、97年4月の消費税率2%引き上げは、その後のデフレの原因ではなかったということです。国内実質民間需要が7-9月期には巡航速度の伸びを回復したということは、この時点で消費増税の影響は終わっていたことを意味します。
 経済不況は、同年11月頃の大手金融機関の破綻を契機として始まったものです。多くの経済指標が悪化したのはそれからです。結果として、日本の実質GDPは97年度にほぼゼロ成長、そして98年度にはマイナス成長へと落ち込み、消費者物価もマイナスに転じていきます。
 デフレの背景には消費税ではなく、もっと根本的な問題、つまり、金融機関の破綻で表面化した、当時の日本経済の構造的な脆弱性の問題がありました。デフレ経済への転落は、消費税とは別の要因によるものであり、その要因が深刻だったからこそ、こんなに長くデフレが続いたわけです。付加価値税率の引き上げが経済のマイナス要因として深刻ではないからこそ、あれだけ税率の高い欧州経済は崩壊していないともいえます。
 欧州経済の試練は、先般の債務危機という金融要因によって起こりました。日本のデフレも、金融要因が発端でした。欧州債務危機の金融要因の背景には、財政要因がありました。日本のデフレの金融要因の背景には、民間の過剰債務がありました。
 今度もし、日本経済に試練が訪れるとすれば、それは、財政要因が金融要因を通じて経済を崩壊させることによってでしょう。
 消費税は本質的に消費を冷やすものではありません。人々は恒常所得仮説に基づいた消費行動をします。一時的には変動がありますが、ならしてみれば、生涯にわたる実質可処分所得に基づいて消費水準を決めています。増税先送り=将来の増税幅の拡大=生涯可処分所得の低下、というのが合理的期待形成です。
 アベノミクスは、資産保有者の資産効果で消費を拡大していますが、それは一部の人々に限られた現象です。多くの国民にとって、生涯所得は、年々のフローの予測に基づいて予想が立てられており、現時点では、社会保障に関する給付と負担の関係が、それに最も大きな影響を与えているとみられます。
 いまは出血状態です。早くここに止血の手当てをしないと、生涯所得の予想はどんどん低下していきます。5%程度の引き上げは、応急の止血措置に過ぎません。本物の選択肢は、その先にあります。
 総需要を持続的に拡大するためには、人々の不確実性を低下させることで流動性選好(→金融資産の積み上がり)を和らげていくしかありません。日本には十分なおカネがあります。問題は、おカネが回らないことです。それがデフレの原因です。
 アベノミクスは、すでに十分におカネがある日本経済にあって、日銀に長期国債というおカネを積ませ、政府に公共事業予算というおカネを積ませることで、さらにおカネを積んだだけのことです。本質的に重要なことであるおカネを回すということができるかどうかは、民間の「期待」に依存します。普通の国民がそこそこ豊かな老後を展望できないような国で、「期待」が高まるわけがありません。政府がおカネを支出したところで、その効果は線香花火でしょう。民間の期待が低下している現状では、砂漠に水を撒くが如しです。
 多くの経済学者は、理論に現実を当てはめようとしていますが、大事なのは、現実に即して理論を適用することです。未来の「希望」を描かなければ、現実の「期待」は改善しません。その役割を担えるのは官僚ではなく、政治だからこそ、私は政界に転身しました。
 消費増税は予定通り早く決断して、その先にある日本の選択肢の議論へと、政治の営みを前進させるべきです。それは消費税との関連でいえば、自助と公助と共助をどのように組み合わせることで「活力ある超高齢化社会の運営モデル」を構築するかという国民選択の問題になります。5%引き上げのさらにその先に、どのような消費税率の水準を設定すべきかが、これによって初めて見えてくることになります。
 加えて、社会保障をいかなる体制のもとに組み立てていくかという議論を通じて、これは統治機構の改革の問題にも及ぶことになるでしょう。

 10月からの臨時国会では、どうせやらなければならない目先の金銭の議論よりも、もっと国家の本質的な選択の次元において、意味ある論戦を繰り広げたいものです。
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松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。

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