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松田まなぶの論点 黒田日銀総裁と麻生財務大臣への質問

財務金融委員会・黒田日銀総裁と麻生財務大臣への質問内容
2013年6月19日 衆議院議員 松田学

〇質量両面での異次元の金融緩和とは?
 世界的な金融市場の不安定は、バーナンキFRB議長が量的緩和の出口に言及したことだけでなく、日銀の異次元緩和で安定すると思った日本の長期金利が乱高下したことも原因。
 中央銀行への過信、金融や通貨量をコントロールできるとの思い込みが剥げたことが、市場の不確実性を高めていないか。
 デフレは貨幣的現象であるのはその通り。但しその場合の貨幣はマネーサプライであってマネタリーベース(中央銀行のバランスシートの規模)ではない。
  日銀は本質的にマネーを創造できる主体ではない。マネーの創造とはまさに「信用創造」。それができるのは民間市中銀行と政府である。
 …中央銀行を巡る大きな誤解を指摘したい。

〇金融政策が効かない状態:「流動性の罠」
 …低すぎる利子率水準のもとでは、人々は債券価格の下落(金利の上昇)を予想して、貨幣供給が増しても、資金は債券購入に回らず、市場利子率はそれ以上低下しようとはしなくなる。
 IS-LM曲線は、マクロ経済学の基本中の基本。
 日本経済の現状は、金融経済の均衡関係を示すLM曲線が横に寝ているので、通貨供給量を増やしてLM曲線を右の方にシフトさせても、金利が下がってGDPが増えるという現象が起こらない状態。このようなときに、GDPを増やすためには、実物経済の均衡関係を表すIS曲線を右にシフトさせるしかない。財政政策は、その一つの手段。
 
 ⇒それが資金需要を増やす結果としてマネーサプライ増大⇒物価上昇⇒デフレ克服。それが本来の順序である。

(問) 日本の金融経済の現状は、量的緩和の拡大で長期金利が下がる余地がある状況と考えているのか。最近の金利や株価などの市場動向は、現状がいわゆる『流動性の罠』に近い状況にあることを示唆していないか。(日銀総裁)

 IS-LM分析 LM曲線が横に寝ている→期待に働きかけ実質金利低下しか方法なし。
 *実質金利=名目金利-予想インフレ率

〇「期待に働きかける」
 黒田緩和後、ブレークイーブンインフレ率(BEI:通常の国債と物価連動国債の流通利回りの差)は黒田緩和前から上昇。確かに、この面では期待に働きかけることはできた。
 しかし、将来への道筋が確認できなければ「期待」の変化は長続きしない。
 見えなければ「不確実性」を増大。金融市場はボラティリティ―を高めるのみ。
 金融政策当局が描くべき道筋とは…長期金利の推移なのではないか。
 いまの日銀に求められていることは、デフレ脱却に向けた金利の推移のイメージをマーケットに対して描くこと。
 一つは、期待インフレ率↑⇒名目長期金利↑なのか。
 債券投資家としては期待インフレ率の上昇は債券の価値を減じるものゆえ、それをオフセットすべく長期金利の上昇は不可避。
 もう一つは、長期金利を不変にして、期待インフレ率↑⇒実質金利低下なのか。
 通貨価値がこれまでに比して減じることで借金の価値(借金することの負担)が減じるということが実質金利の低下の意味。
 しかし、①が先に起きる。結果として借金の負担は減らないから、資金需要が増える効果は生じない。
 意味あるのは②だが、日銀は長期金利を制御する自信があるのか。

(問) 今回の量的緩和が奏功するためには、「期待に働きかける」ことで予想インフレ率が上昇して実質金利が低下しなければならないが、その前提は名目長期金利が上昇しないよう、これをコントロールできるとのコミットメントではないか。政策当局としては、少なくとも、今後の金利の推移のイメージをマーケットに対して描く必要があるのではないか。(日銀総裁)

・望ましい道筋は、人々の期待が上昇⇒予想インフレ率が上昇⇒長期金利は変わらず実質金利は低下⇒資金需要が増大⇒マクロ経済の需給ギャップが縮小⇒インフレ率と長期金利がともに上昇。
 つまり、この中で「長期金利は変わらず実質金利は低下」のプロセスが奏功するまでの間は、日銀は長期金利をコントロールできなければならないはず。
それができるコンフィデンスを市場に示せるのか。

〇長期国債購入オペは持続可能か?
・銀行券ルール(ALM)を超えた長期国債購入は短期調達-長期運用。
・今回やったことは、市中銀行の「預金(負債)-国債(資産)」を、市中銀行「預金(負債)-対日銀準備預金(資産)」+日銀「銀行からの準備預金(負債)-国債(資産)」へと形を変えただけ。国民の預貯金は銀行を通じて日銀による国債運用に。
預金-国債の間に日銀が介在することになっただけ。
 日銀のバランスシートの見通しでは、平成12年末から14年末にかけて、
 資産は158兆円⇒270兆円(うち長期国債89兆円⇒190兆円)
 負債は、当座預金47兆円⇒175兆円 銀行券は87兆円⇒90兆円とほとんど増えず。
 資産の+112兆円増を上回る当座預金+128兆円増で 長期国債+101兆円の保有増。
・あるべき姿は…市中銀行「預金(負債)-市中への貸出(資産)」+日銀「市中での貨幣需要の増大による銀行券発行残高の増加(負債)-国債(資産)」への変換なのではないか。
・民間資金需要の増大→銀行は超過準備預金を引き出して市中に運用。
  日銀はバランスシートのつじつまを合わせるために何をするのか。①売出手形、②準備預金の利率引上げ(銀行の短期資金を日銀に貼りつかせる…日銀の収支悪化による国民負担)、③大量に購入した保有国債の売却、のいずれか。
・結局、③を迫られ、長期金利を抑制し続けることは困難になるのではないか。
(問) 銀行券ルールを撤廃して大規模な国債購入で日銀のバランスシートを拡大する裏付けは、銀行から日銀への「当座預金」の増大。今後アベノミクスが奏功して資金需要が増大すれば、当座預金の引き出しが大規模に起こり、長期国債を売却しなければ日銀のバランスシートは辻褄が合わなくなるという事態が想定されないのか。(日銀総裁)

・FRB議長発言…緩和のペースを落とす(緩和をやめるわけではない)との予想だけで株価が下落。
 ⇒何らかの政策をとる(とると報道される)とマーケットが認識する「変化」はそれを土台とするようになる。
・日銀は2年で2倍ものバランスシートの拡大。FRBと同様、大規模な政策を標準ケースとするものに市場の政策観が変化してしまったのではないか。
 少しばかりの調整によるバランスシートの変化が莫大なインパクトを市場に与えかねない。
 →長期国債購入(当座預金の積み上がり)から抜け出せない政策の「罠」に陥ったのでは?
 →いずれ長期国債購入はペースダウンのときが来る→その際の長期金利上昇へのインパクトは大胆な政策だった分だけ高まっているのではないか。

〇日銀がいくらもがいても、マネーを増やすのは市中銀行である。日銀は金融の論理の世界の中で金融機関を相手に行動することを運命づけられた主体。大きな限界。
→リフレ派はデフレを「貨幣的現象」だとする。⇒つきつめればデフレ克服策は「ヘリコプターマネー」。しかし、日銀は金融の論理の箱の中にいるので、ヘリコプターマネーができない。

〇それが不可能なら、いずれ長期金利封じ込めは困難に。
 財政審の「奇妙な安定」(企業の設備投資の伸び悩み⇒民間部門に余剰資金⇒銀行を通じて国債に⇒低金利⇒財政が回っている)
 デフレ脱却とは「奇妙な安定」を崩すこと。これは、民間資金需要の増大と、銀行のポートフォリオを国債から貸付へとシフトを意味するものであり、いずれ長期金利の上昇は不可避。
 日銀も、政府が掲げる「名目成長率3%、実質成長率2%(このとき、デフレータ上昇率1%、消費者物価上昇率2%)を、望ましい成長の姿と想定しているのか?
 ⇒この場合、長期金利>名目成長率、であり、政府が目標としている財政のプライマリーバランスを達成しても、政府債務残高の対GDP比率は発散的な拡大が継続。この状態も長期金利上昇圧力。
 過去、日本では、長期金利<名目成長率、の状態は、名目4%成長のバブルのときのみだった。名目3%成長の下でどのようにして、長期金利<名目成長率の状態を実現させて継続させるのか。
 結局、この状態の実現にコミットし、そのメカニズムを市場に納得させられなければ、日本の経済財政運営に答はないのではないか。

(問) 実質で2%、名目で3%成長との政府の想定について、日銀の見方如何。これが達成できても、長期金利を3%以下に抑えなければ財政の債務残高/GDP比の発散が続くが、バブルを発生させることなくこの状態を実現できる見通しはあるのか。(過去、日本で名目成長率が長期金利を上回っていたのはバブル期) (日銀総裁)

〇中長期の成長軌道の前に立ちはだかっているのが来年の経済。
 このままでは財政が2つの面から経済のマイナス要因として作用。
・一つは金融政策と同じく極端な政策で土台を上げてしまったこと。第2の矢の「機動的な財政政策」。これが「臨時異例」なら、来年度は元に戻す。⇒それ自体が政府投資の前年比大幅マイナスではないか。実質GDP成長へのマイナス寄与をどの程度と見込んでいるのか?
・もう一つは消費増税。5→8%アップで、国の赤字国債発行は減額される。
 国債発行額の減少それ自体は短期的には経済にマイナス。
 *家計の資金余剰+法人部門の資金余剰+政府の資金不足=海外部門(黒字、赤字)
・経済指標はタイミングがずれる。消費増税の判断は今秋。そのときの判断は今年度4-6月期のGDP、せいぜい夏ごろまでの経済指標。来年4-6月期ではない。
・短期的には消費増税でも経済は大丈夫であることを示すことが最も大事。
 来年春に向けたポリシーミックス如何。

(問) 来年度の経済が問題。①今年度公共投資の「臨時異例」の水準を来年度に元に戻すことによる実質成長率へのマイナス寄与をどの程度と見込んでいるか。②来春の消費税率3%引上げは新規赤字国債の発行減にどの程度寄与するのか。③同じく2015年10月の2%引上げについてはどうか。来年度は①と②の2つの財政による景気悪化要因が短期的には経済成長を腰折れさせる可能性があるが、そうならないためのポリシーミックス戦略はあるのか。(財務大臣及び財務省)

・政府投資は必要だが、景気対策のためにやるべきではないことは90年代の教訓。国民の厚生を高めるために必要を見極めて計画的段階的に行うべきもの。
その意味では、90年代に比べて政府投資の水準は半減しており、これが減らし過ぎであることはその通り。防災安全国家など、政府投資を増やす必要はある。しかし、急に増やしたり減らしたりではない。むしろ将来に向けて着実に投資がなされる姿を示したほうが成長への「期待」を高める。
 しかし、大事なのはトンカチではなく「未来への投資」。Wise Spending

〇日本の金融資産ポートフォリオは悲惨。
 国債発行残高に占める赤字国債のウェイトは、95年度末30.0%→2013年度末見込み64.2%に。
 未来への投資へと日本の金融資産全体のポートフォリオシフトが必要。
 国民経済の中での財政で見れば…赤字国債を減らしても政府としての「未来への投資」の財源であれば、その範囲で国債発行を増やして、全体として国債発行額は増やさないという財政運営であれば、国民経済全体としての金融資産ポートフォリオは改善。国民貯蓄は有為に活用。
 そもそも赤字国債も建設国債と同様の60年償還となっていることに理屈はあるのか。
 財政規律とは赤字国債の早期償還と毎年度の赤字国債の発行減のことではないのか。
 何がWise Spending として未来への投資であり、将来世代に残す純資産なのかを見極めることが本来の財政運営。それができる仕組みを創る必要。

(問) 国債の60年償還ルールが建設国債だけでなく赤字国債にも適用されていることについて明確な理屈はあるのか。財政支出のうち「未来への投資」を見極め、財源の面でも経常的支出(赤字国債)と区別してメリハリのある財政運営を行う仕組みを考える必要はないか。(財務大臣)
 こうしたメリハリの効いた財政運営の基礎となるのが、日本維新の会が提案する公会計改革と、それを含む財政責任法案の提出。責任野党としての建設的提案だった。今国会で審議されそうもないのは残念。次の国会でぜひ審議してほしい。
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Author:matsuda-manabu
松田政策研究所は、松田学を中心とした講師・研究員が、これからの日本の未来に関する国家像や社会の在り様について総合的な調査・研究 を行い、夢を持てる国づくりの基盤を創り、社会と国家の発展に寄与するのが目的です。

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